いつから、そこに居るのか

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「と、言うわけで私の昔からの知り合いだ 仲良くしてやって欲しい」 帰って2人に諸々の説明をした 「吸血鬼の始祖 バン・エリザベートだよ! 気軽にエリちゃん って呼んでね!」 (ちゃんが増えてるしピースはしてるし気軽に呼べるような立場に無いってことをこいつ自覚してないのか?) さっきまで私が悩んでいた事を今まさに実行している始祖を見ながらため息をつく (まぁ、2人の反応次第だな) 「えーと……ディアさん?」 「ん?なんだ?アーシャ」 「あの、私たち確かに他種族に知り合いが 居るとは聞いてましたけど それが始祖だとは聞いてませんよ?」 と当たり前の質問をしてくる 私も頷きながら 「私もさっき知ったところだ」 事実なのだから仕方ない 「いや、それにしても始祖だろ? 王都の中に入れて大丈夫なのか? 戦争とか始まらないか? 後普通に強そうで怖い」 みるみるうちに元気を無くすエリザベート 「王都に入れたのは問題無いだろう 私が入れてるしな それとエリザベート曰く友達が欲しいらし い…… そこでだ、お前たち2人が良ければ友達に なってやって欲しい」 無理難題かもしれないがこの2人が受け入れるのなら私も受け入れようと思う 「いや〜……そうだな…… ひとまず俺らの自己紹介からするか?」 (ナイスだフェイル! お前たちが自己紹介をするんなら少しだけ 親睦が深まるだろう!) 内心ガッツポーズをして エリザベートの反応を待つ 「うむ! お主らが人間なのは分かるが名前とかは 何一つ分からないからなよろしく頼むぞ!」 (良い食い付きだな、これなら話が拗れる心配 も無いかもな) 「俺はフェイル 歳は18 ちょっと前に学校を卒業して今は王様からの 命令でエアフォルクした人間を 探し回ってる ってところか」 「私はアーシャ 歳は17です 学校の卒業を早めてもらってフェイルと 一緒にエアフォルクした人間を探してるの 将来の夢は……フェイルのお嫁さんです」 (ん?ちょっと待て、なんか今必要のない事 言わなかったか?) エリザベートとパチクリと目と目が合う (いや、私に助け船を求めるな) 「えーと? 2人は結婚前提でお付き合い してるってこと?」 エリザベートのまともな質問 「いえ、私が一方的に大好きなので 誰にも渡さないって意思表示です」 猫のようにシャーと構えるアーシャと 口を開けてポカーンとしているフェイルと それを見てやれやれと頭を抱える私と 目を輝かせて興味津々なエリザベート それぞれ反応は違えど、仲良くいけそうな空気感だった あれから数時間 エリザベートはアーシャと 私はフェイルと 話しをしていた エリザベートは興味津々にアーシャの話しを聞いていてそれに対して気分が良くなったのかアーシャもかなり惚気けていた そんな雰囲気を見てフェイルは恥ずかしくなり部屋を出ようとしていたので私が呼び止めこれからの戦闘面の課題を提案、整理していた 「ところでエリザベートそろそろ帰らなくて 良いのか?外もだいぶ暗くなってきたぞ?」 「あーほんとうだ……うーん……どうしよう」 一国の主が恋バナに花を咲かせて国を留守にするのはどうなんだ? と思ったが、まぁ私の国ではないから良いか とも思った 「今日のところは帰ろうかな ディアちゃんはどうするの?」 「?どういうことだ? 私はこのまま2人とご飯を食べて寝るぞ?」 「え?そうなの?」 「そうだが……何か変か?」 「いや、魔王が復活したのにまだ人間側に 居るなんておかしいなって思ってたの」 聞いた瞬間椅子から立ち上がる 「しかもその指輪…… 最後に会った時はしてなかったよね? その指輪のせいで何か縛られてるのかな? って思ってたの」 部屋の中が薄暗いせいでエリザベートの顔が少し歪んで笑ってるように見える 「それに、魔族の貴女が魔王討伐に力を貸す なんておかしくない?」 足元が揺らいでいる 平衡感覚が無くなって宙に浮いている気さえする 「な、何が……言いたい」 絞り出した言葉が会話のキャッチボールになってないことは分かる 聞かれているのは私だ、それなら答えるのも私だが問い返す事で精一杯だった 「……貴女勇者に惑わされてるんじゃないの?」 それを聞いた瞬間頭に血が登り魔力が溢れる 部屋の中なんてお構い無しに全力でエリザベートを殺そうとした だが 「あははは、そんなに怒っちゃって可愛いね ディアちゃん エリザベートは笑っているのに、表情が笑っていない……口元は歪んでいるが 殴り掛かった右拳を手首を握ることで止められる 手を振りほどこうにも握力が強すぎて振りほどけない 諦めて左手で殴り掛かるが 手首を掴まれてしまう 「私を殺す事に熱心なところ悪いけど 辺りを見回したらどうだい?」 言われるがまま辺りを見回す!う フェイルの部屋に居たはずなのに見たこともない空間が広がっている どこまでも続いていそうな荒野の空には月が紅く輝いている、空気は透明にも見えるが紫色にも見える 「ようこそ私の結界へ」 「何処だここは?」 静かに聞き返す と言うより手が振り解けない以上そうするしかない 「私も久しぶりにこれを出したからね ディアちゃんが見たことないのも 当たり前だよ」 「だからなんだと聞いている!」 「そんなに怒らないでよ 今貴女は私の気分一つで殺せるんだよ?」 首に鎌が添えられる 鎌を操っているのはエリザベートの血?だと思う 「良い子だね…… さて、ここが何処なのか さっきも言ったけどここは私の結界だ 結界と言っても何かを抑制したりする事は 無いけど、増強する事は出来る 例えば私の膂力や魔力スピードとかをね」 つまり、相手のフィールドに無理やり引きずり込まれたと言ったところだろう 「あの部屋で君と殺り合うには少し狭いのと あの二人には迷惑かけたくないからね 少し場所を移動したって事さ」 なるほど 改めてフェイルとアーシャは居ない事を認識する 「改めて ようこそ私の結界 パラダイス・ロスト(消失した楽園)へ」 エリザベートが笑い 私は冷や汗を流す 絶望に近い恐怖を感じ、これからどのようにするかを考える余裕など微塵も無かった
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