いつから、そこに居るのか

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「ディアちゃん力強いねー 握るの疲れちゃった」 手を離す前に何かの液体で手を拘束される (これは……血…か?) 手を拘束した液体から血の匂いがする 「さてディアちゃん話しの続きだ 君は魔族だよね? それなのになんで人間側に手を貸すのか しかも昔君を拘束していた勇者はもう 居ないんだよ? 勇者も別に無理やり拘束していた 訳じゃない、逃げようと思えば逃げれた筈 君という個体が魔族という全体にとって 異物である事、そしてそれを君自身が理解 していない事 これらを踏まえておかしくないかい? って私は思ってる訳だ」 「逆に言えば私という個体がどのような行動 を取るかは自由ではないか?」 「いや、そんなことは無い 魔族である以上君が所属している あるいは所属していた陣営は魔族だ その君が人間側に付いたとして誰が嬉しい んだい?」 「それは……」 エリザベートの言いたいことは分かる 魔族である以上勇者に手を貸した時点で反乱分子 魔族である以上人間側に受け入れられる事は無い 要は中途半端な立ち位置に居る と言いたいのだろう 「だが、それがどうしたと言うんだ? 別に今更私のことを咎める奴も いないだろう?」 「そうかな? 先日君はエゲルに 見つかったらしいじゃないか その後エゲルがどういう行動をとったか君は 知っているかい?」 確かにエゲルに見つかったが なぜそれをエリザベートが知っているんだ? 「いや、知らないな」 「ふむ…… まぁ、自分が何をしているか改めて実感 するには良い機会だろう…… エゲルのとった行動はシンプルだ 今、君の討伐隊が組まれている どこに居るかは把握出来てないだろうから 手当り次第に人間の街を滅ぼすかもね」 少し疑問に思うことがあるが一旦置いておく 先程に比べ冷静になってきた頭で考える 「そんなことをするのなら 私は1人でも魔族と戦う…… たとえ死ぬとしても それが勇者と私がした約束だ」 言い切る 勇者が生前言った言葉 人類を守る柱の1部 そう、1部なのだ 今はなかなか見込みのある奴が居る そいつが育つまでは面倒を見たいが 犬死させるのも気分が悪い それなら未来に託し私自身が死ぬことになったとしても未来に繋ぐ 勇者とはそういう約束をしたと思っている 「ふふ……そうかい」 そう言うと彼女は指をパチンと鳴らした 手を拘束していた血が消えて自由になる 「すまなかったね、試すような真似をして 君がここ数十年間何をしていたか、実は 知っているんだよ」 どういうことだ? 私を封印した勇者はあの後どうなったかは知らないが少なくとも私が知っているあの強い勇者では無いだろうと思う 「君を封印してから数ヶ月後に勇者が私の ところに来てね頼み事をしに来たんだ」 どこからともなく椅子を出し座るエリザベート 「ディアを封印した事 封印前にディアと約束した事 それも晴れて夫婦に慣れたこと あの時の勇者はそれは嬉しそうだったぞ? 得に指輪を渡せた時の話なんて まるで子供がはしゃぐみたいでな」 優しい笑みを浮かべながら話す ……先程までの気味の悪い笑い方とは違う 「それで封印が解けてディアちゃんが自由に なった時魔族側に戻ろうとしたら殺して くれって言われてたんだ」 驚いた……と言うより少し残念だった 勇者に信用されていなかったのかもしれないと思うと心が痛い……まるで締め付けられたように感じる 「あー、勘違いしないで欲しいんだが 勇者君曰く君には人を殺して欲しくない って言ってたぞ?」 心配性の奴め私はお前のおかげで変われたというのに…… 「話しを戻すが 魔族側に戻らなかった場合 遅かれ早かれ魔族に君の存在はバレる そうなると殺される可能性が高い…… そこでだ、私たち吸血鬼が力を貸して やろうと約束を交わしたのだ」 ふんぞり返る吸血鬼の始祖 「なるほど……そういう事か……」 自然と笑みが零れる 死んだ後も私のことを思い他属に支援を要請してるとは 「という訳で私も暫くの間君たちと行動を 共にすることになったからよろしく頼むぞ」 最後にそう言い話を締めくくるエリザベート 「なんだそういう事なら先に言ってくれ 私は勇者と約束したからあの二人の面倒を 見ているのだ フェイルに至っては本当に人間なのか 分からないぐらいには逸材だしな」 「そこに関してはすまない 私は魔族を信用していないんだ」 険悪な顔をして言うエリザベート 「昔、色々あってな…… それ以来魔族は信用しないようにしている」 しっかりと目を見て言われる 嘲笑う訳でも馬鹿にするわけでもなく ただ本心を語っているように見える 「まぁ、ディアちゃんは例外だけどね〜 さっき私が勇者君をちょっと悪く言った だけで、鬼の形相で殺しに来るんだもん 死ぬかと思った怖〜い」 「よく言うよ……素手で止められた挙句 生殺与奪まで握られてるこっちの身にも なってくれ」 ため息混じりに返す ぶっちゃけ殺そうと思えば殺せるシチュエーションだった 「まぁ、この結界の中に入った時点で死ぬ のは確定してるし、後はディアちゃん次第 だったって所かな〜」 「入った時点で負けとか理不尽過ぎないか?」 「こう見えても一国を預かる始祖ですから」 ピースピースと可愛いポーズを取っているが 結界の能力とのギャップにより素直に可愛いと思えない 「さて、そろそろ出ようか 2人が待ってるだろうし」 「この後の説明に関しては任せるぞ?」 「え?どこまで喋って良いか分からないから 難しいんだけど」 「あの二人には全て話しているから 心配無用だよ」 「ほほぉ?私には話さなかったのに? あ〜あ〜私拗ねちゃおっかな〜」 「悪かったって」 昔通りのやり取りをしながら結界を出る2人 そこには曇りない笑顔が2つあった
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