いつから、そこに居るのか

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攻撃してくるディアは楽しそうである こちらは必死に攻撃を躱し、躱しては攻撃しようとするがステータス的に正面から行っても勝てるわけが無い (どうしたものか……) 割と考える余裕は有るので色々考える ステータス差は余り覆せない 相手が舐めていれば割と裏をかくことが出来るがディアはそんなタイプでは無い 次にステータスの上昇を待ってみる どれほどのスピードで成長しているか分からないが恐らく今も成長している それなら成長していないように見せてどこかで成長した分だけの緩急が着いて一撃ぐらいなら入れれるかもしれない だが、成長具合が分からないのでは確実性が無いから余り気が進まない それに、ディアには俺のステータスが見えてる 見えている相手には差程の驚異ではないだろう (相討ち覚悟でやってみるか?) 大きな一撃を受ける代わりに相手にも致命傷を与えることを考える ディアは大振りな攻撃をしてきていない こちらが隙をいせていないからだと思う 隙を見せて1発勝負に持ち込んでみても面白いかもしれない 最悪俺だけ致命傷を受けてもエリザベートとアーシャが近くに居るから死にはしないだろう (やってみるか) 「どうした! 何時までも防戦をしていては相手は倒せない ぞ!」 (こっちとしては楽しそうで羨ましいよ) ディアは何時もと違い気分が高揚しているようだ やはり根は魔族、戦闘が好きなんだろう 魔力を解放する 俺の魔力量的に魔力を使用しての戦闘は余り向いてない これで終わらせるという意志を見せる 「やっとか…… 遅すぎて待ちわびたんだぞ? お前の全力を真正面からねじ伏せてやろう」 更に魔力を解放するディア その魔力は黒と紫色を合わせたような色をしている 視覚化出来るほどの濃密な魔力を纏い攻撃態勢をとるディア 「師匠が弟子の一撃をねじ伏せたら 弟子か悲しむと思わないか?」 「なに、そんなやわな奴では無いだろう お前は」 「それもそうだな……」 軽口を叩くがディアの言う通り 俺も戦いが好きだ 格上の相手に対して勝利した時 勝てるはずが無い敵に挑み一矢報いた時 いずれにしてもこれは勇者が該当するもの 勇者でもなんでもない俺にはそんなことは無理だ 無理だと分かっていても夢見る もしかしたらこんな俺でも勇者になれるんじゃないかって 口角が上がる 「やっぱりそうじゃないよな」 魔力を全開放する 小細工して勝つのもいいが やっぱり正面からねじ伏せる方が良い 出来ないかもしれない……でも出来た時俺はさらに強くなり自信にも繋がるだろう 勇者を目指せると 勇者になれるかもしれないと 「ほぉ……すっかり小細工すると思っていたが 正面からやり合うつもりか?」 「小細工して勝っても 小細工無しで勝っても 勝ちは勝ち それなら、小細工無しの方が かっこよくないか?」 「はっ、そんなこと言えるのは 子供までだぞ?」 「子供が夢見るような大人になれば 良いじゃないか!」 最後に交わした言葉が自分を奮い立たせる 青色の魔力を纏いディアに一直線に突っ込む 対するディアは1歩も動かず俺を迎撃しようと構えている 心が踊る 心の奥底で冷えていた戦いを楽しむ気持ち 今燃やさないで、何時燃やすというのだ この一瞬に命をかけれなければ 今後旅をしている過程で悔いの残る死を迎えるかもしれない その時笑って最後を迎える……迎えたい そうなりたいなら、思い出せ! 勇者に憧れて訓練してきたあの頃を 勇者になれないと言われたが諦めなかったあの頃を! 風を切る音が2つ重なる 少しの静寂の後 「ごふっ」 大量の血が地面に当たる音が聞こえる 血を吐いているのだろう 「エリとアーシャを呼んでくる」 「チッ……くそが」 そう言って倒れ込む 意識はあるが腹に穴が空いていて立ち上がれない 俺の拳をディアが躱し 俺の腹をディアの拳が貫いた それだけだ 「悔やむな……まともに当たれば私も無事では なかっただろうからな」 そう言ったディアの後ろには あったはずの岩が砕け 枯れていた木はどこかに吹き飛んでいる 威力は十分 相手が上回っていただけの事 その事実が俺に痛みとして物語っている 地面に伏したまま拳を握りしめエリザベートとアーシャの到着を待っていた
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