いつから、そこに居るのか

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フェイル達と別れて 開けた場所に来た 「あの〜私は何をすればいいんでしょうか?」 恐る恐るエリザベートに聞いてみる 「そうだな、とりあえず私に全力で魔法を 打ってみてくれ」 「いやいや、危ないですって!」 人に向けて魔法を打ったことなど1度も無い なんなら魔族にも無い 別に魔族に打つのは良いのだけど 威力が高すぎて周囲を巻き込む可能性がある為味方に被害が出る それでは意味が無いと思っている 「良いから良いから」 と、手を振りながら距離をとる (いや、普通に人に向けて打ったこと無いんだけど) エリザベートは腰に手を当てて待っている 「フ、ファイヤボール」 赤の下級魔法を打つ 「腑抜けが」 エリザベートが息を吹きかける ファイヤボールが消えた 「え?」 「そんな芯の無い魔法など私には届かん もっと全力で打て」 そう、目の前に居るのは始祖なのだ 人間の私如きが打つ魔法でダメージを与えれると思っているのが間違えなのかもしれない 「わ、分かりました!」 魔力を練る 先程と同じ大きさのファイヤボールに先程よりも魔力を流し込む 暴発しないように意識しながら今の限界まで魔力を流す 流れた魔力がちゃんと中で芯を作り 芯を中心に渦を巻くようにイメージする 「ファイヤボール!」 今度は威力が桁違いだと確信する エリザベートも目を瞑って当たるのを待っている (これなら怪我まではしなくても直撃ぐらいなら…) そう思い見守る エリザベートに直撃した魔法は大きな爆発を起こし周囲の物を少しだけ燃やす 周囲に影響が出る程の威力とも捉えれるが これはまだ魔力の練り込みが足りない証拠でもある アーシャは確かな手応えを感じ 舞い上がった砂煙が無くなるのを待つ そこに立っていたのは 上半身が吹き飛びかろうじて背骨だけ下半身と繋がっている状態で辺り一面に血しぶきと臓物を撒き散らして口が裂けた状態で頭は転がっている その状態を目にしたアーシャは 「うっ、おえぇぇあ゛あ゛」 食べたものを床に吐いていた 「案ずるな」 声が聞こえたと同時にエリザベートの下半身から血肉が生えてくる 臓器、骨、筋肉、そして皮膚 順番に再生しいつもと変わらない状態でそこに立っていた 「この程度で死ぬのなら私はとうの昔に死んで いる」 アーシャを思ってかどこか悲しい目をしながら アーシャに歩み寄る 「まぁ、反魔法を使って弾くのも可能だった のだがな、流石にあの威力ではお主が 無事では済むまい 醜態を晒したのは悪かったな」 と言いながら頭を撫でようとすると 手を払われ怯えた目でこちらを見ている 「まぁ、そうなるのも無理はないか 所詮私は化け物だ さっきの状態から回復出来るのも吸血鬼の 中では私だけなのだよ 酷い時なんて普通の怪我を治癒するのに人 と、対して変わらない者もいるしな」 アーシャから距離を取りその辺の岩に腰掛ける 別に今までこの様な事が無かった訳では無い 仲の良かった人類は居た ただ皆が皆私の能力を知り、理解してくれた訳でも無かった 今回も同じだったと言うこと 特に気を落とすことは無い フェイルとアーシャ共に人類の中では強さ面で言えば異質な方だろう それよりも上の化け物を見たのだ 自分の理解に及ばない相手に仲良く接すると言うのは無理な事だと私も思う…… 思う、と言うより気づいたと言うべきか 私の能力の1つリザレクション これは私という人物がどこかしらに残っている限り必ず再生するというもの つまり、髪の毛1本でも残っていれば全身再生する これを見た者が私の事を化け物だと言うのも仕方ない 本来それ程までの再生力を持った奴が居ないのである ならば理解されずアーシャの様に怯えるのも無 理もないと気づいた (しかしどうしたものか……) ディアには私が面倒を見ると言った手前攻撃魔法の練習をさせる必要が有る しけし、こうも怯えられていては会話もろくに出来ないだろう どうしようかと首をひねり頭をぐるぐると巡らせていると 「おい、エリ悪いが治療を頼む」 ディアが私たちの元に来た ディアだけという事は恐らくフェイルの治療を頼みに来たのだろう 「やれやれディアちゃんも回復魔法覚えなよ」 と、ニヤニヤ笑いかけると 「ふざけてる暇は無い、急いでくれ」 しかめっ面で返された (いやいや、そんな怒んなくていいじゃん?) エリザベートとアーシャはフェイルの容態を知らない 腹に穴を開けた状態で血を流し続けていることを知らないのだ フェイルの元に近づくに連れてアーシャの焦りが増しているのが分かる そう、遠くから見ても分かるほどに血を流しているのだ 「ディアさん後でお話しが有ります」 「構わんが意味は無いぞ?」 随分と怒っている様子なのは分かる だがあの一撃を貰えば私もタダでは済まない それは私もフェイルもお互いを潰し合う覚悟でやったのだ 外野から何を言われてもあの時の決断に変わりはないと思うし、間違っていないだろう 「意味が無いって、どういうことですか?」 震えながら聞いてくるアーシャ 「こんな状態になるまでやる必要があったん ですか!」 パァン と、乾いた音が鳴る アーシャが私に平手打ちをしてきた 躱すことも出来たが食らってあげるのも今の私の務めかもしれない だが…… 「お前には分からんかもしれんがな」 アーシャの額にデコピンする デコピンされたアーシャは後ろに数回転した後止まる 「このデコピンの威力を打てる私が 手加減出来ない程の力量を持った相手で あったのだ、それ相応の威力で相手する しかあるまい」 「でも!」 起き上がったアーシャが何かを言おうとしたが 「そこまでにしろ2人共」 静かに静止を促すエリザベート エリザベートはフェイルの状態を見ながら回復魔法を使っていた 「言い争うのは後でも出来るだろう まずはフェイルの安静を確保するのが 先では無いのか?」 口調は丁寧なものの、怒気のこもった声に目が鋭くなり睨み付けられていた 「とりあえずアーシャお主は回復魔法を 私と一緒にかけてくれ」 2人がかりで治す事を優先する 流血が酷く中々、治癒が進まない 2人がフェイルを治癒している間ディアは後ろから見守ることしか出来なかった
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