いつから、そこに居るのか

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治療を終え、エリザベートの結界からフェイルを担いで出てくる 傷は塞がったが出血が酷かった為か、まだ意識は戻らない ベッドにフェイルを寝かせたディアを睨むアーシャ 後ろから見ているエリザベートは涼しい顔をしているが2人の行動をよく見ている 何か起これば止めに入るつもりだろう それに対してディアは全く気にしていない フェイルを死の淵まで立たせたのは自分だという自覚を持ちながらも悪いことはしていないという態度である 「ディアさん、先程も言いましたが あそこまでする必要は無いと思います」 静かに切り出すアーシャ 「先程も言ったが、反撃しなければ死ぬのは 私だったのだ それにこいつも、それを分かっていて やったのだ、返り討ちにするのが私の務め だと思っている」 以前として、2人は平行線を辿っている (今回はアーシャに歩み寄ってやっても良いのだが…… ディアの言っている事も分かる どちらに歩み寄ってもどちらかの意見が尊重されない以上私は中立を守るべきだろうな) アーシャの攻撃魔法とディアの拳どちらが先に届くのかは明白 だが、周囲の影響的にアーシャの魔法はかなり危ない ここで立っている面子ならともかく、寝ているフェイルそして、この建物の周辺を通行している人間にまで怪我をさせるかもしれない そうなる前に喧嘩を収めたいが どうしたものか…… 悩んでいるとピクっと何かに気づいた 「もし……もし、フェイルが死んじゃったら どうするんですか 彼が死んだら私はこれからどうすれば 良いんですか!」 (これは……凄いな……) アーシャのフェイルに対する依存度が思ったよりも高いことに驚いた……のでは無い (いや、結構ヘビーではあるが) 怒りが頂点に達したからかアーシャから漏れ出ている魔力が尋常じゃない 部屋が木造の為魔力に当てられた木が割れたりめくれたりして、周囲に影響を及ぼす程の魔力濃度だということを明確にしている。 (はぁ……やれやれ) エリザベートは立ち上がり魔力を練る (若いとは良いものだな だが、偶には年寄りの説教も必要かのう…) 「おい、アーシャ魔力を抑えろ ここら一帯を吹き飛ばすつもりか!」 「話をそらさないで下さい! やり過ぎだって言ってるんです! それをしょうがないの一言で片付けて フェイルが死んだらどうするんですか! もしかして、フェイルが強くなり過ぎて もう面倒が見れなくなっちゃったんじゃ ないですか?」 「は? おい、アーシャよ世の中にはな言って 良い事と悪いことがあるのだぞ?」 今度はディアがキレた 魔力が僅かに滲み出て力を入れているだろう足元の木が割れている 「パラダイス・ロスト」 結界を展開したと同時に2人がぶつかりあった 正確にはディアが接近戦でアーシャは遠距離なので攻防が始まったと言う方が正しいだろう アーシャの魔法を躱すディア 魔力で拳を覆えば弾くことも出来るがやらないということは恐らくそういう事 当たればタダでは済まないのだろう 対するアーシャは先程怒り狂っていたが戦闘は冷静である 地形と魔法を利用し上手く距離を取っている ただ、本気で戦っている様子の無いディアはどうしようかと悩んでいる 魔法使いと近接戦闘者の1VS1は近接戦闘者の方がかなり有利である それこそステータス差が魔法使いの方が5倍高ければ話しは変わるが アーシャにそれ程ステータスがあるようには見えない つまり終わらせようとすれば何時でも終わらせれるが、それでは意味が無い アーシャには出来れば今回の様なことは今後も有るということを分かって貰わなければならない だから、力任せにアーシャを撃退したからと言ってそれに意味が有るとは思っていないのだろう (さて、ディアちゃんはどうするのかな?) 高みの見物という訳では無いが 私は今のところアーシャに畏怖されている その私が何かを言うよりかは、ディアちゃんに任せた方が良いだろうという判断だ 「そんなもんですか! 大した強さも無いのにフェイルに対して 師匠面してたんですか!」 (酷い言われようだな…… まぁ、傍から見たらそう見えるのか?) ディアはアーシャの言葉を素直に受け止める 確かに師匠面はしていたかもしれない だが、力量的に言えば今も尚フェイルより数段強いのは間違えない それが事実だったとして それなら、なぜあそこまでの怪我を負わせたのかは確かに疑問が有るのだろう (瞬間的な爆発力で言えば私に匹敵していた そして、それを見誤った私のミスと言えば ミスだな) 冷静に分析しながら色々考えるが やはりあそこでフェイルに致命傷を負わせた事に関して言えば後悔はしていない 瞬間的な爆発力で、私に匹敵したとして 後続の敵はどうするのか、倒せなかった時どうするのか、そしてやり直しが出来るのか 実践で言えば間違えなくやり直しは出来ない 死ぬか、生きるか の2択だ 今回死なずに済んだのも模擬戦だったこと 近くに回復魔法に特化した者が2名いた事 その2人が無事にフェイルの元に辿り着ける環境だったこと 実践で以上の条件が揃うことなど滅多に無い つまり命を落としかねない中で如何に生存率を上げるかが肝である 今回は放置されれば間違えなく死んでいる状況 これからは、そのような事が無いように立ち回ることをフェイルにディアは求めている (まぁ、さすがに言葉が足らないとは思うのだけどね) ディアちゃんが言った事をそのまま受け止めればフェイルがどうなっても良いというように聞こえるが 前述した事を考慮したら危険を上手に回避する為の訓練になる それを教えてあげねばアーシャがあのようになるということも分かるだろうに (やれやれ、ディアちゃんもまだまだ若いね) 年寄り臭い事を考えていると 「緑よ」 五大元素を冠する魔法の詠唱が聞こえ始めた
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