いつから、そこに居るのか

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105年前勇者とディアは知り合う と言っても最初はお互いの命を奪い合う そこでディアは敗北した 敗北なんて生温いものではない惨敗だった 手も足も出ず勇者に完封されたのである 「殺せこんな惨めな姿で置き去りにするな!」 そう、この時のディアは手足を切り捨てられ血を垂れ流すだけの置物同然だった 「君、名前は?」 勇者から聞かれたがそんな事お構い無しにディアは自らを殺せと叫んでいる 「ん〜、ソフィー彼女に回復魔法を」 「え〜?でもこいつ回復したらまた殺しに 来るんじゃない?」 「大丈夫そうなったとしても、また僕が切る」 「はぁー、まぁそれならいっか」 ソフィーと呼ばれた女の回復魔法がディアの傷を癒す、癒すと言うより最早再生だった 手足が生え元の状態に戻る 回復すると同時にディアはソフィーに殴りかかる だが、その拳が当たる前にディアは地面に転がる 勇者がディアの足を切り落としていた 手だけで跳躍しソフィーを狙う 今度は両腕が無くなる 「ソフィー回復魔法を」 勇者が言う 「また〜?」 回復魔法をかける 両手足が生えてくると今度は勇者目掛けて攻撃しようとするディア またもや手足が無くなる… そんなことを10回以上繰り返した 「もう、辞めるのかい?」 「何故だ、何故私を殺さない!」 ディアは叫ぶ 両手足を切り捨てられ、回復され ディアからしてみれば弄ばれてるのと同じである 「僕はね、魔物と人間が共存出来ると思って いるんだ、だから君みたいな魔族と仲良く なりたいんだ」 「何を言ってるんだ?」 ディアは唖然とした もう、人間と魔族の戦争は100年以上続いてる それが、仲良くなるだって? 「何を馬鹿げたこと言ってるんだ貴様は 無理に決まっているだろう 私達魔族と人間では何もかも違うのだぞ? それが、共存だと?私を馬鹿にしているの か?」 「でも、今実際君と僕は会話が出来ている じゃないか」 「……」 「名前を教えてくれないか?」 「で、ディアだ」 「ディア、僕は君と話が出来てとても嬉しい」 「う、うるさい!」 そう言い残しディアは走って逃げた だが、勇者は追いかけてきたのだ そしてすぐ捕まり 「ディア一緒に王都に行ってみないかい? 美味しいご飯もあるから」 行ってみないか? じゃない、これは強制だ 行かないと言ったらどうなるか分かったもんじゃない 「どうせ、拒否権なんて無いんだろ?」 「よく分かってるじゃないか」 と、笑う勇者 そして、王都に着く勇者と、ソフィーそれとディアの3人で食事をした 料理が机に並ぶ 見た感じ毒等は入って無さそうである 恐る恐る1口食べてみる ! 美味すぎて、手が止まらない なんだこれは?こんなにも心が踊るのは何年ぶりだ? そんな疑問と共にディアは食事を飲み込む そしてまた口に運ぶ 飲み込む と一気に完食してしまった 「ここの料理美味しいだろう?」 無言で頷くディア 「さて」 と言い勇者はディアを見つめる 「ディア君に1つ提案がある」 身構えるディア これから自分がどうなるか全く検討がつかない 「僕達の仲間になってくれないかい? 魔王を討伐するパーティーに加わって欲し い」 またもや唖然とするディア 「正確には魔王と和解するための橋渡しを して欲しい」 なるほど、勇者の目標は魔族と人間の共存 その為に人間側の良さを知った魔族が居るか居ないかは大きな差だろう だが 「魔王様はそんな事で揺るぐような方では 無い」 ディアなりの、事実を告げた そもそも魔王が人類を根絶やしにしようとしている理由は、暇つぶしである 長い時間を生きるにあたり魔王は人間と言う種に焦点を当てた それは何故か、そこそこ強いからである この種を絶滅させるのには時間がかかる つまり、長期的に暇が潰せるのである 共存したからと言って魔王の暇つぶしが別の方向に行くだけでなんら解決しない つまり、魔王を殺すか、魔王の玩具を新しく見つけなければ意味が無いのである 「そうか……」 「だが、私としてはお前たちと共に行動 する事に関しては良しとしよう そもそも、負けているのだ逃げようが無い」 と言う訳で勇者と旅を共にし 魔族の中では上位に居たディアは魔物、魔族の情報を駆使しなんとか 勇者と出会ってから5年後には魔王討伐に成功 討伐した後勇者と勇者の仲間たちと平和な日々を送って居た そして魔王を討伐してから15年後、勇者にとある提案をされた 「ディア、君に頼みがある」 「なんだ?勇者、改まって今更そんな窮屈な ことを言うような仲ではないだろう?」 何時もと同じように会話をして居るディアと 顔にこそ出ていないが、焦っている勇者 「君がそう言うと思ってこれは他の仲間には 言っていない、君なら引き受けてくれると 思っているんだ」 ちょっと嬉しそうなディア だが続く言葉がディアを豹変させる 「もう時期僕は死ぬ そして、僕が死ぬという事は魔物と魔族の 恐怖が人間に降りかかるかもしれない だから、君にはそれを止める足回り をやって欲しいんだ」 突然真顔になるディア 「おい、勇者勘違いするなよ? 私は魔族だお前たち勇者と勇者の仲間とは 仲良くやっていくし、ある程度は人間を 見逃して居る、だがな魔王が死んでから の人間を見てみろ魔族と人間の立場が 逆転してないか? 下級の魔物を痛ぶり遊ぶ人間 魔族を囲んで無抵抗なのに殺す人間 今まで我々がしてきたことが返ってきてる と言えばそれまでだが、やられたら やり返されても文句は言えないだろ? だったら悪いが私は両方に手出しはしない 眺めるだけだ、ましてやお前たちの居ない 世界などつまらんから、隠居しようと 思ってる」 「ディアそこをなんとか頼む、君の言い分も 分かる、だが今魔王の居ない魔族と魔物 なら十分分かり合えると思うんだ、トップ の居ない組織と話し合いこれからを決めて いく、絶好のチャンスなんだ… 僕はそこまで生きていけるか分からない だから君にお願いしたいんだ」 「そもそも、なぜ私なのだ 普通にソフィーとかに頼めば良いじゃない か?」 「それもそうなんだが、もし荒事が起きた時 止めれるのも君だと思う なにせ、君は僕達の中で2番目に強いから」 「なんだ、嫌味か?」 段々とイライラするディア 「いやそんなつもりは無い、すまない」 そして、何時もとは違う勇者 覇気が無い、何事にも前向きに挑むあの勇者はどこ行ったのだ? 「下らん、さっきも言ったが私は眺めるだけ どちらの味方もしない」 「頼むディアこの通りだ」 振り返ると勇者は頭を下げていた 完全にブチ切れたディア 「おい、勇者お前いつからそんな弱くなった 私に頭下げてまで先の心配か? 少しは自分のことに時間使ったらどうだ」 と言いディアは部屋を出た 「待ってくれディア」 「しばらくお前の顔は見たくない」 そう言い残し、ディアはしばらく1人で行動を取ることにした この後に待ち受ける勇者との別れがどのようなものになるか等この時の2人は想像もしなかった
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