いつから、そこに居るのか

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「ディアここで話すことは誰にも言わないで 貰えるかな?」 少し黙る まず勇者が仲間内に隠し事をすること自体異常なのだ こいつは、自分の弱点でさえ仲間に話した なんなら私もそれを聞いた (まぁ、当時は弱点なんか有ろうが無かろうが勝てなかったが) 「その前に1つ質問に応えろ 今から話すことは皆には伝えているのか?」 首を横に振る勇者 少し、考える (何故だ?何故そこまで隠している?そんなにも重要な事なのか?) ここで考えていても答えは出ない 「分かった…誰にも言わないと約束する」 「ありがとう……実は………」 勇者が話し終えた 私は気がついたら勇者の胸ぐらを掴んでいた 「お前!そこまでして魔王を倒したのか! 何故だ!何故そこまで……」 「誰かがやらなきゃならないことなんだ… それがたまたま僕だったんだ 分かってるこれが無茶苦茶なことだって それでも、街の平和 魔王を恐れる市民達、村人たちを思ったら いても立っても居られなかったんだ」 勇者をベッドに投げ捨てるように胸ぐらを離す 「だからってこんな……」 「良いんだ、ディア君がこの話しを聞いて くれただけでも僕は救われた気持ちになる」 私は半分泣いていた もう半分はここまで追い詰めた市民達への怒り 「僕は恐らくもってあと数年の命だろう だからこの前の話しを君にしたんだ」 どうすれば良い…… どうすればこいつは長く笑って居られる… 無理ださっきの話が本当ならとうに限界なのだ 「ディア、お願いだ僕の代わりに人類を 守る柱の一部になってくれないか?」 言葉が詰まる…… 分かった…と言えば良い それだけでこいつは救われるのだ 「少し考えさせてくれ…」 そう言い残し部屋を出た (何故だ何故、あそこで直ぐに言えなかった… 分からない……なんなんだこの感情は……) 街に出ようと思った だが、この感情のせいで人前に出たくない 今私はどんな顔をしている? 分からない…分からない… 知らない……知りたく…ない この感情は魔族として持ってはダメな感情だ この感情を肯定してしまえば 魔族として、私が何か大切な物を失いそうで怖いのだ 頭の中はぐちゃぐちゃだ 頭から勇者が離れない ただの人間だその他より少しだけ優れた人間だ 何も特別じゃない なのに何故あいつが無理をして勝ち取った幸せを享受することが出来ないという事だけでこんなにも胸がいっぱいになるのだろう あいつにはまだまだ生きて欲しい 生きて皆と一緒に笑いたい 生きてあいつの隣を歩いて色んな物を、同じ瞬間を味わいたい… あぁ、これではまるで… 翌日の夕方頃、自分なりの答えが出た 勇者に会いに行って、私の本心を伝えよう 「勇者、居るか?」 「ディア、いらっしゃい」 「いらっしゃいって、ここお前の家じゃない だろ」 「はは、それもそうだね」 「昨日の話なんだが、私なりに答えを出して 来た」 「ありがとう、早速聞いても良いかい?」 「その前に勇者、1つ確認したいことがある」 「?あぁ、なんでも聞いてよ 今、ディアにだけは隠し事をしてない状態 なんだ」 「私がお前のことを愛していると言ったら どうする?」 ……待て待て待て待て待て! これではほぼ告白ではないか! というか告白だ! 無理無理無理無理 恥ずかしいって…… 心臓がバクバクだ これバクバクなのか? 破裂してるんじゃないか? 「?何を言ってるんだ? 僕は会った時から君のことが好きだよ?」 ボッ 頭から煙が出てる 絶対出てる……いや、出てないんだが 「なら、勇者約束しろ 私はお前の願いを聞いてやる お前はその私をちゃんと最後まで見てくれ」 ……俯く勇者 (分かってるんだ、無理なことはそもそも寿命が違う) でも、ただ一言 「当たり前だよ、ディア」 そう言って欲しかった その一言だけで私は恐らく未来永劫頑張れる そんな気がするんだ 「ディア、僕はもうすぐ死ぬ だから最後までは約束出来ない ごめん、でもこの命尽きるまで傍に居る これだけは誓うよ」 「あぁ、よろしく頼むぞ勇者」 目尻に涙を浮かべ勇者の胸に頭を預ける (あぁ…なんて心地が良いんだ) この瞬間が、この瞬間だけでも切り取って 未来永劫続けば良いと思う むしろ続いてくれ、頼む もう何も要らない、勇者と共に居られるのなら 「あれ〜?アツアツじゃん2人ともー」 ニヤニヤしながら入ってくるソフィー 顔を思わず隠す私 勇者が開き直って 「悪いが、ディアは僕の物だ」 「ディアちゃん〜 僕の物だ だってよ〜?」 「や、やめてくれソフィー 私も初めてのことでどうしたら良いのか 分からないのだ」 顔を隠したまま答える 「まぁ、とりあえずこれで2人とも離れ離れ になることは無さそうだね って、ディアちゃん泣いてるじゃん!」 気がついたら涙が出ていた 今まで張り詰めていた緊張感が一気に緩んで 嬉しさが込み上げて噛み締めている そんな感じだと思う 「これは身内だけでもお祝いしないと だね〜」 そう言ってソフィーは部屋を出ていった 静かな部屋の中、私と勇者はお互いを見つめ 笑った
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