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…ここは?
霧がかかっていて遠くがよく見えないな。
何かの小屋が近くにあるみたいだがそれ以外はなさそうだ。
取り敢えず小屋に行ってみるか。
「誰じゃ、そこにいるのは」
「!?」
いつの間にか、老人が立っていた。
驚いた。全然分からなかった。
名前を聞かれた、ということで合ってるな?
「俺は冥界の…。いや、佐藤彰宏(さとう あきひろ)だ…です」
「ほう、なるほど。サトウか」
「ワシのことは…ホウソと呼べ」
あ、ちゃんと返してくれる人だった。
「とにかく、ここはわしの縄張りじゃ。そこに侵入するとは、覚悟できているんじゃろうな。」
まずい、早く逃げなければ…って、そうだ忘れていた!俺は今度こそ特殊な能力を持っているに違いない!なぜなら転生したから!「転生をしたら何かしらのチート能力がある」というのが暗黙の了解みたいなのだから!
「!…もちろん。俺はすごく強い…はずだから、かかってこい!」
「ほう?」
チート能力があるであろう俺が、さすがにこんな老人に負けるわけが…
ドサッ
「どの口がそれを言ってるんじゃ」
…えっ。俺とホウソは少し離れていたはずなのに一瞬で負けた、だと?
謎の既視感。そうだ、あの2人に倒されたときもこんな風に呆気なかった。この世界では、これが普通なのか…?
いやちょっと待て!チート能力は!?転生者にはチート能力が備わっているはずだろう!
…ん?これは感じる!さっき話した、神の気配だ!能力を教えてくれるのか!?
『その年齢のまま飛ばしてあげたので十分でしょ?あとは自分のやりたいようにやりな』
…っておい!
(もしかして…)
『チート能力?面倒だからつけてないよ。じゃ、さよなら』
(は!?)
気配が消えた…。
「おい!聞いとるのか!」
「…はっ!急に何だ?…ですか?」
「全く急じゃなかったわい。さっきからずっと声をかけていたのに気づかんとは、どういう耳と神経をしているんじゃ」
「ワシは優しいからな。超絶弱いお前を1人でも生きていけるよう、弟子にしてやろう。暇つぶしにはなるじゃろ。つまらんかったら破門じゃがな。感謝しろ!」
えっと、よく分からないが、俺は強制的にホウソの弟子になったようだ。
この世界は治安が最悪らしいが、その世界で殺されない、しかも、転生してすぐに俺を世話してくれる人に出会えたということは、さっき言われた通り飛ばす先は考えてくれていたようだ。
俺は、前の世界では何の能力もない普通の人間だった。だがこの世界に来たからには、神からチート能力など用意されなくても自分で身につけることを決意した。
濃かった霧は、いつの間にか晴れていた。
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