出会いは突然に

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出会いは突然に

 東京から愛媛の片田舎に引っ越してきたのはつい先日。  今流行りの古民家生活に憧れた父と母がいい物件を見つけたと即決してしまったことが発端だった。  正直、都会のゴミゴミとした生活があまり好きではなかったので今回の引っ越しは私にとっても嬉しいことだった。  幸い近くの高校に無事編入することができることになり、私は新しい制服に袖を通して鏡で全身をチェックする。  今日は新しい学校の初日なのだ。  友達ができるだろうか…それが少し不安だった。 「お母さん、じゃあ私は学校に行ってきます」 「行ってらっしゃい。私とお父さんも今から仕事だけど、何かあったらすぐに連絡してね」  母はそう言うとパソコンを広げてカタカタと何か文字を書き始めた。母は小説家なので地方に住んでいても仕事ができるのだ。  絵本作家の父はダイニングテーブルに用紙を広げて何か絵を描いている。きっと新作の絵本を書いているのだろう。  私はそれを横目で見ながら靴を履いて外に飛び出した。 「んん〜初日にふさわしいいい天気」  何か行事がある日は必ず晴れるのだ。それがたとえば天気予報が降水確立80パーセントだとしても、晴れてしまうのだ。 (まるで神様に守ってもらっているみたい)  常々そう思っていた。それくらい私の晴れ女ぶりはすごかったのだ。 「神様。今日も一日平穏な日が過ごせますように」  私は祈るように晴天を仰いで学校に向かって歩き始めた。
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