ある女の恋

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ある女の恋

戦場に立つ貴方に恋をした。 国のためにと命をかけ、戦いの最前線に立ち槍を振るう貴方はとても頼もしかった。 戦いを終えて手当を受ける貴方。 「戦いが終わったら貴女が必ず傷を癒してくれると考えると、とても安心して戦いに行けるのです」 私は、戦いに行った者の帰りをただ待つしかできない看護師。そんな私を頼りにしてくれる貴方が、とても愛おしい。 貴方が負ったどんな傷でも、私が治す。私は私の精一杯で、貴方を守ろうと思った。 「次の戦いを制することができれば、戦況が大きく変わり、こちらが優勢となります。とても厳しい戦いになるでしょうが、俺は必ず勝って戻ってきます。そうしたらまた手当をお願いできますか」 貴方はそう微笑んで、また戦いへ行った。 貴方を待っている時間がもどかしくてたまらない。もしも貴方が死んでしまったらどうしよう。このまま私のもとへ帰ってきてくれなかったら。 貴方に会いたい。会いたくてしかたがない。 それでも私は、貴方の帰りを待つことしかできない。貴方の言葉を信じて待つしか。 何日か経って、伝令が来た。こちらの軍が勝ったと。 あぁ、良かった。後は貴方が帰って来るのを待つだけ。きっと貴方は傷だらけで帰ってくるから、手当の準備をしておかなくちゃ。 やはり厳しい戦いだったのだろう。いつもより重傷者が多くて、病室はすぐにいっぱいになった。 運ばれてくる人々の手当をしながら、貴方を探した。 けれど貴方は見つからなかった。どの病室を見ても貴方はいなかった。 まさか……。 私はいてもたってもいられなくて、病院を飛び出した。 他の人に止められたけれど、そんなの知らない。 早く貴方のもとへ行かなくてはならないのだから。 数日前まで激しい戦いが繰り広げられていた場所。血の匂いが鼻を刺す。 まだ戦死者の遺体などはそのままになっていた。 そして、 貴方はそこにいた。 もう、息はなかった。 貴方の冷たくなった頬に触れる。 その瞬間、目から涙が溢れ出てきた。 どうして、 それは貴方に対する問いかけではなく、自分を責める言葉。 貴方のことは私が守ると決めたのに、どうして守りきれなかったの。 大切な人ひとり守れなくて、何が看護師よ。 待ってて、私も今そっちに行くわ。 貴方の横に落ちている槍を手に取り、自分の腹に突き刺した。 薄れゆく意識の中、私は神に願った。 貴方を助けてくれなかった神なんて、信じるべきじゃないのかもしれないけれど。 もしも、生まれ変われるなら。 こんな醜い世界じゃなくて、戦争なんかない平和な世界で、貴方とまた会いたいと。
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