4人が本棚に入れています
本棚に追加
4.「煙草」「指」
頬を撫でる指に残る、知らない煙草の香り。澱のように心の奥底に沈み重なる言えない言葉。
昨夜は何処に行っていたの?
誰と会っていた?
何度も言いかけては飲み込んで、見つめてまた込み上げる想いが喉を詰まらせる。
俺が何も聞かないから、貴方も何も言わない。
静寂を壊すようにグラスの氷が崩れ、繊細な音が波紋のように広がるのを合図に、二人の境目が溶けて混ざり合って、心が悲鳴をあげながらも貴方の熱を乞い願う。
苦い残り香を纏ったまま重なる唇に、抗うすべもなく流され揺蕩い、俺はまたひとり、深く昏い闇に堕ちてゆくのだ。
何度浮気されても最後にはここに戻って来てくれるなら…。な話。
(#創作BL版深夜の60分一本勝負)
最初のコメントを投稿しよう!