2章 小さな依頼主

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 明日香は立ち上がり、サボ1号の入った容器を握りながら意識を集中させ、植物との共鳴度をアップさせる。 <じゃあ、1号ちゃん。子猫さん探しを手伝ってね> <ワカった>  サボ1号は周囲の植物に子猫の行方を訊ね、その会話を明日香が同時に聞き取れる状態とした。断片的に、子猫の経験したことが映像や言葉として明日香の頭に飛び込んでくる。明日香はそれらの情報を頭の中で処理しながら、実際に子猫が向かった場所へと足を向ける。  ーーーーー母親、すなわちミーさんの不在時に、好奇心の強いその子猫は換気口から飛び出し、ちょうどそこを通りがかった小学生、恐らく低学年の子供たちに見つかってしまった。  子供たちも弱々しい子猫がひとりでいることに問題を感じたのだろう。自分たちで何かしてあげたいと思ったのかもしれない。その場から、子猫を連れ去った。はじめは手で抱いていたが、途中で段ボール箱を発見。以降、その箱で子猫を運ぶ。  そこから数分ほどの場所にある公園。いつも、小学生たちが遊んでいる公園なのかもしれない。公園を取り囲む植栽にちょっとしたスペースがあって、子供たちはそこに段ボール箱を置いた。そして、理由は分からないが、しばらくしてそのまま全員が立ち去ってしまった。帰宅が遅くなったら親に怒られるということかもしれないーーーーー  明日香は今、段ボール箱の目の前に立っている。上部が閉じられてしまっているので右手で開ける。すると、小さな小さな子猫の姿が目に入ってきた。箱の中に光が差し込んだためか、子猫も身体を起こす。そして明日香の姿を見て、小さくか細い鳴き声を上げた。 「おぉ、子猫ちゃん。元気そうでよかった。・・・お母さんとはぐれて寂しかった?今から、お母さんのところに連れて行ってあげるからね」  段ボール箱には子供たちへの置手紙を残し、明日香は子猫を抱いてミーさんたちが暮らす空き家へと向かった。
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