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17時。その日も来店していた青木さんが席を立ちあがり、帰り支度をはじめた。その姿に気づいた渚は、急いでレジへと向かう。もう何度も青木さんの接客を行っているので、渚にもそのリズムが分かってきた。
「お嬢さん、今日はこのナラピタってのを使ってみようと思うんですけど、どうやるんでしょうか」
「あ、電子決済ですね?・・・まず、こちらのボタンを押していただけますか?」
渚は丁寧にアプリの使い方を説明し、青木さんは無事、会計を済ませることができた。
「やっぱりね、この年齢になっても新しいことにはチャレンジせんとあかんと思いますので、このナラピタってのを使ってみたんですよ」
「じゃあ、これからはどんどん使っていけますね(笑)」
「うんうん、お嬢さんが丁寧に教えてくれたもんで」
相変わらず、青木さんはなんだかんだと渚が嬉しい言葉を投げかけてくれる。
「・・・そうだお嬢さん、仕事の楽しさはもう、見つかりましたか?」
「はい・・・、確かに、こんなお話ができるのは私にとっても嬉しいことなんですけど、自分にとって一番楽しいことが何なのか、まだ言葉にはなってない感じです」
「そうですか、そうですか。まぁ、ゆっくりと見つけられたら良いじゃないですか」
じゃあ、と、青木さんはレジカウンターの机をトントントン、と鳴らす。
「あ、ではまた、お待ちしています」
「ほな、ありがとう。また来ますわ!」
礼をして、青木さんを見送る。
・・・と、その時、渚は店の奥から柔らかな視線を感じた。目を向けると、勝手口からミーさんが渚に真っすぐな視線を投げかけていた。
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