1章 お菓子な悩み事

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 90分の薬草茶ワークショップ。4月ということで、菊花茶、蒲公英(タンポポ)茶、ドクダミ茶、カキドオシ茶を含む7種類の薬草茶の解説と試飲を行った。9名の参加者は妙齢の女性の友達同士で、ワイワイと賑やかに進行。あっという間に90分のプログラムは終了した。 「今里先生~、今日はありがとうございました~」  このワークショップを企画し、明日香に相談を持ちかけた米田さんが笑顔で挨拶に来る。 「いえいえ、素敵な機会をいただき、こちらこそありがとうございました」  明日香も笑顔で応える。 「米田さんはどの薬草茶がピンと来ましたか?」 「そうねぇ、私はすぐに頭に血が上っちゃうから、菊花のお茶が良かったかもねぇ。主人にもいつも、キツく言っちゃうのよ。反省しているんだけどねぇ」 「じゃあ、薬草茶を飲んで、ご夫婦ともどもリラックスしてくださいよ」 「それにしても、あちらの助手さんも、よく働く子ね?」 「朱里ちゃんですか?そうなんです。朱里ちゃんは働き者なので、いつも助けてくれていまして。・・・あ、そうだ、今更ですけどご挨拶を・・・」  そう言いながら明日香は名刺を取り出し、米田さんに手渡す。 「やだ、私、名刺なんて持ってないよ?」 「いえいえ、いいんです。また何かあったら駆けつけますんで、よろしくお願いしますね」 「ええ。・・・でも、この名刺の『薬草の力でお悩みを解決します』ってなぁに?」 「はい!それは・・・」  突然、朱里が会話に参加してきたので、米田さんは少し驚きながらも朱里のほうへと視線を向ける。 「昔、私のお父さんの会社を明日香さんに救ってもらったことがあったんです。それで、私の家族もバラバラにならずに済みました。・・・そんなことがあったので、明日香さんは私の恩人なんです」 「あらあら。薬草の力でそんなお悩み解決ができるの?」 「はい。明日香さんは話をまとめるのが上手くて、これまでも色々な人から相談を受けて、それらの問題をバシッと解決してきたんですよ」 「朱里ちゃん、もういいから(笑)」と明日香がたしなめると、朱里は笑顔でお辞儀をして片付けの作業へと戻っていった。 「まぁ、営業の一環として、色々とお話を聞かせていただいているってご理解いただければと思います」 「そういうことね。・・・もしかしたら、ちょっと相談させてもらうことがあるかもしれないけど、その時は・・・」 「ありがとうございます。また名刺に書いてある連絡先に連絡いただくか、奈良市のお店にお越しいただけたらお話ぐらいでしたら」 「うん、ありがとう。・・・でも、ごめんね、今回の講座、急にお願いしちゃって」 「いえいえ、こんなの、いつものことですから(笑)」  米田さんと挨拶を終え、明日香と朱里は帰り支度を整えた。
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