自己愛による雲泥の差

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

自己愛による雲泥の差

二話 自己肯定感が高い。というのは、自信に満ち溢れている。という意味ではない。 弱い自分でも、それでもいいか。と認められる。ダメな自分で別にいいか、と自分を認める。ものの事を言うのである。 剣河は、最近、その事を本やらネットを見て、学んだ。 しかし、現状維持で何も行動を起こさない、知識ばかり増えていく。 そして、剣河と非無始が出会って、三ヶ月が経った。 剣河は相変わらず、無職である。今日も今日とて、部屋に引きこもりゲームをしていた。 ゲーム実況者になろうという案は、すでに頭から消えていた。なぜなら、ゲーム実況について色々調べるにあたり、ゲーム実況者として、生活するのは、楽ではなく辛い道のりだと言う、現実を思い知ったからである。 剣河「というか、ip300あったら、もっと、なんかさぁ…」 と。 非無始「私の賢さは普段は、普通ですが、命の危機に陥ると、途端にipが300まで跳ね上がるんですよ」 剣河「いや…まぁ、普通ではないと思うよ…普通だったら、俺とゲームして、負けて、人(剣河)の机をぶっ壊さないと思うよ…」 と、言いながら、こなごなに壊れた机を2人で片付けていた。剣河の部屋のリビングで。 非無始「いや、わざとではないんです、かっとなってつい…」 剣河「気持ちは分かるけど、もう、やめてね…」 非無始「気持ち分かるんですか!?怖いっ!」 剣河「あんたが怖いよ!時速300kmで台パンを真横でされるこっちの身にもなってくれよ! 知ってるか!?ショショの奇妙な冒険のグレイシーダイヤモンドも時速300kmで殴るんだぜ!?怖いに決まってんだろ!」 非無始「でも、あなただって、壁を殴ってましたよね。しかも、肩がぶつかったなんてバレバレな嘘を」 剣河「…!そ、それは…!」 非無始「なんですか?非力なら、正当化出来るんですか?」 剣河「それはごめん、謝る、でもさ、君だって、僕の机を破壊した訳じゃん、確かに僕も悪かったかもしれない、だけど、悪い事をされたからって、悪い事をしていい、理由にはならないでしょ?しかも、君の方が、酷い事してるじゃないか、器物破損、僕は別にあなたの物を壊したりした訳じゃない、人は誰しも失敗するだろ?人生で数えきれないほど、でも、間違ったら、謝る事が大事でそこから正す事が大事じゃないの?僕は謝ったよ、でも君は全く反省の色が見えないよね、ほら、謝ってよ」 非無始「…あんたね、なんで、そんな上から目線なのよ、ニートのくせに」 剣河「今、僕がニートな事は関係ないよね、そうやって、他人が言われたら嫌な事言うのやめた方がいいよ」 非無始(何こいつ、めっちゃ腹立つんだけど…!) 非無始の心が少し揺らいだ、三センチほど。 その後、なんやかんや喧嘩したが、二人とも、ゲームを楽しんだ。 剣河は、深夜コンビニに帰る途中、夜食が入っている、レジ袋を片手に持ったまま、深いため息を吐いた。 剣河は、人生を半分以上諦め、自殺願望もあったため、非無始を拒絶するのではなく、受け入れていた、まぁ、美人だからというのもある。 友達も恋人もおらず、家族とも疎遠気味で、部屋でいつもたった独り、孤独感で押しつぶされそうになっていた、剣河にとって、非無始との出会いは、なんとも言えない感情をくすぐる。 剣河「はぁ、今日も今日とて、無職か」 剣河は環境に恵まれている。 衣食住に困っている事もなく、親に支えられているからだ。 まさにおんぶに抱っことはこの事である。 だが、なぜこんなにも、ひねくれダメ人間になってしまったかと言うと。 実は剣河は、前世の記憶を五つ持っていた。 世界人口の十人に1人が前世の記憶を五つ以上持っている。 世界人口は七十億人なので、十億人が、前世の記憶を五つ以上持っているのである。 つまり、あまり、稀な事ではない。 左利きがいる割合が、十人に1人なので、そのような風に捉えてもらえればよい。 しかし、記憶がたくさんあるのは不便である。 その前世の記憶だけで、脳のメモリーを三分の一使っており、日々消耗している。 剣河は、前世では必死に頑張っていた。しかし、凡人以下がいくら頑張ろうとも凡人にすらなれない。 底辺の人生から救ってくれる救世主も現れない。 そして、五つも記憶を持っている、剣河が出した充実した人生を送る方法の答えは現状維持であった。 そう、確かに、現状維持は日々、小さな不幸で苦しむ事になる。 だが、意味もなく、成長してみようだとか行動して、傷つくよりも、何倍もマシだったのだ。 剣河(俺の目標は無職のまま死ぬ事、寿命なんていらない…寿命はクソ……早く死にたいのに、仮に自殺か、自殺幇助(じさつほうじょ)してもらうとして、下半身付随とか、全身付随とか、大きな後遺症が残ったまま、結局若くして死ねずに、老衰して、一生を終えるんじゃないかとか考えると、死ぬ勇気が出ない、かと言って、働くのも怖い…もう、マヂムリ、リスカシヨ…) そう、思いながら、帰路にある、横断歩道の赤信号を待っていた。 隣には、こんな遅くに10歳ほどの子供が。 何やら、眠たげだった。おそらく、少年も剣河と同じ袋を持っている事から、コンビニ帰りなのだろう。 剣河(こんな遅くに、同業者がいたとは、多分、不登校なんだろうな) 剣河は待っている間、スマホをいじり、ワイヤレスイヤフォンを耳にはめた。 YouTuboで、楽な死に方。と検索した。 すると、完全燃焼した練炭を車の中に入れ、そこにじっとしていると、楽に死ねる。という動画を見た。 剣河(練炭自殺か…………) と、剣河はその動画のコメント欄を読んでいた。 すると、剣河と同じように死にたいと思う人達で溢れかえっていた。 剣河(あぁ…味方がいる…) と、心の中でつぶやくと、少し、涙目になる。 剣河(あぁ、なんで、俺はメンヘラなんだ!この前この動画見ただろ、それで、練炭が完全燃焼するまで、10時間経つって聞くから、めんどくさくて、結局やらなかったんだよ!もう!今の俺のポエム気持ち悪ッッッッッッ!) と、スマホを切って、ポケットに戻した。 だが、この動画を見ると、不思議と気持ちが軽くなる。 なぜだろう。 スマホならば、この動画をいつでもどこでも見れるので、ネット依存症の剣河は、外出する度、スマホをポケットにしまっていた。 すると、隣にいた、少年はウトウトして、目を擦りながら、横断歩道を歩く。 剣河「え?」(いや、お前、まだ赤…) すると、そこに、時速40kmを出している軽トラが、走ってくる。 軽トラの運転手は運転席の窓を全開にして、そこに、肘をつき、大あくびをかましていた。 剣河「やべぇ!!!」 その大声に軽トラの運転手は、緩んだ気が元に戻る。 剣河は、車の前に出て、子供の盾となった。 スマホは飛び出した拍子にポケットから、出る。 しかし、車は急ブレーキをかけて、事故は起きず、2人は無事だった。 だが、ほんと、後数秒、軽トラの運転手がブレーキを踏むのが遅れていたら、剣河にはぶつかっていただろう、そのくらい、すれすれで、思わず、剣河は、へたぁ、と腰が抜けて、座り込んで、涙目になる。 そして、剣河は、立ちあがろうとすると、足がありえないほど震えていて、やっとのこさ立ち上がったが、つまづいて、こけて、ひざを擦りむいた。 子供は泣くこともなく、ただ驚いていて、瞳孔がガンと開いていた。 その一部始終を少し遠くから見ていたおっさんが、駆け寄る。 おっさん「す、すごい…勇気だ…普通とっさに動けないよ」 剣河はこの成功体験のせいで、安い自信がつき、自分に疑心を持ちながらも、自己評価が高くなるにつれ、自分のひざから血が出ているのを見て、弱い自分を認められない事により、自己肯定感が下がった。 自己評価が肥大化していくと、理想の自分と、現実の自分の差が激しくなり、葛藤に駆られた。 一方その頃、鏡坂は、アフリカのとある村にいた。 助けを求められていたのだ。 害獣駆除を手伝って欲しいと、その害獣は、村を踏み潰して、破壊し、確認できるだけでも、1506人は噛み殺している。と、そのうちの半分は快楽(遊び)の為に殺し回っている。 散弾銃や、ライフル、戦車の砲弾を受けても無傷らしく。 その戦車をなんと咀嚼して、喰ったらしい。 その害獣とは、前世が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の全長およそ1000m、体重170t以上、時速238km移動する人喰い超巨大ワニであった。 想像したまえ、フランスのエッフェル塔が324m、東京スカイツリーが634mである。 東京スカイツリーの三倍以上の巨大が、新幹線並みのスピードで、移動する。もはやそれは神話の幻獣のような美しさがあった。 その超巨大ワニを鏡坂は素手で一撃で仕留めた。 そして、アフリカから日本まで、海を走って渡って10分で帰った。 一人の男がいたその男の前世はスパルタ軍の王レオニダス一世である。 スパルタは、現在のペロポネソス半島南部スパルティにあった古代ギリシア時代のドーリス人による都市国家である。 スパルタ軍は300人で、20万人の敵軍を返り討ちにしたという。 そして現世でも、その戦闘狂いぶりは激しく。 相手が100人だろうが、1000人だろうが、一人で戦いを挑んでは、血まみれになって帰還する。 名は、老出連寺(ろうだれんじ)。 戦士であれば、誰もが知り、尊敬し、恐怖する男であった。 その男の目的は天下無双、その願いが叶うのであれば、どんな屈辱であろうとも、構わなかった。 しかし、その男は純粋であるが故に善悪などはどうでも良く、ただひたすらに強さを求めていた。 悪人だろうが、善人だろうが容赦なく叩き斬る。 弱者には興味がなく、常に強者と戦う事が幸福であった。 因みに、メロンソーダが好きである。 そして、街中で、帯刀している鏡坂を発見すると、勝負を挑んだ。 鏡坂は戦いを拒絶したが、お構いなしに。 男は先手必勝で、最速の抜刀術で斬りかかる。 鏡坂はスレスレで避けると、その斬撃は、ビル群を真っ二つにした。 男は、地震や津波よりもはるかに驚異的である。 鏡坂は激怒すると同時に剣を抜いた。 激しい読み合い、剣が衝突するごとに地響きが起こる。 強者である老出連寺の計算では、後、三十手で勝負は決まると予想しており、もちろん、勝者は老出自身。 しかし。 なぜか、計算外の攻撃が老出に当たる。 老出(なぜだ!?確かに、今の攻撃は防げたはず…!この男、鏡坂は今、何をした…!) 鏡坂には特殊な能力があった。 その能力というのは、身体能力を0.98倍上げるというもの。 いや、弱くなってるじゃねぇか! ふざけてんのか!ぶち殺すぞ! とお思いだろう。 しかし。 鏡坂はほんの一瞬、能力を使い、身体能力を0.98倍、下げ、瞬間的に元に戻す。 強者は、相手の動きを予測しながら、常に戦闘している。 そのため、一瞬、相手の身体能力が変化すると、タイミングがずれ、攻撃が当たってしまうのだ。 野球で、ピッチャーが、あえてスローボールを投げ、バッターのタイミングを外し、ストライクを取るように、鏡坂は、この戦法で今まで勝ってきた。 そして、予想外の攻撃が、致命打となり、老出は追い詰められ。 鏡坂の正体不明のその力にだんだんと精神を削られる。 剣河は相手の斬撃を空中でかわすと、そのまま男の剣を必殺の奥義で粉々にし、男に裏拳を顎にクリーンヒットさせた。 男の脳はぎゅるんぎゅるんと揺れ、脳震盪を起こすとそのまま泡を吹いて気絶した。 剣河は綺麗に着地すると、荒い息を整えるため、肩が上がるほどの深呼吸をする。 鏡坂(かなり、手強かったな…) 鏡坂は生まれてこのかた敵なしで、少しテングになりかけていたので、このような接戦は初めてであったため、自分はまだまだなんだと、自己評価が下がった。 しかし、鏡坂は自分を認める事ができる。 鏡坂「よし、帰ったらさらに修行を積もう、自分が弱い事を知れて今日はいい日だ、反省点が三つも見つけられた」 その反省点を活かす事で、更に強くなり、接戦だった剣豪の男と同じレベルの敵が数日後に現れたが、善戦して、勝利を収める事で。 自己肯定感が上がった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!