最後に、もう一度だけ。

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母親が言っていたことが嘘ではないのが わかったのは、度重なる検査から解放され、 退院してきたその日の夜。 「これは」 自宅に保管されていた、新聞の朝刊。 一面に彼と俺が墜落事故の2人の生存者 としてインタビューを受ける写真が でかでかと掲載されていたのだ。 「たいへんなことがあったんだし、 無理に思い出さなくてもいいけど、 せめて川瀬さんには優しくしてあげて。 明日、川瀬さんがいらっしゃるって 連絡があったわよ」 面食いの母親が彼を気に入っているのは 理解できた。 確かにあんなにキレイな顔立ちの人、 そうそうお目にかかれないからな。 ただ少しでも何かを考えると ものすごく頭が疲弊してしまう。 早く眠りにつきたいと自室に籠った。
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