最後に、もう一度だけ。

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「岸野くん、おはよう。よく眠れた?」 翌朝8時。 半分寝ぼけたまま起き出し パジャマ姿でリビングに入ると、 彼と母親がダイニングテーブルにつき、 コーヒーを飲みながら談笑していた。 「‥‥おはようございます」 「ふふ、そんなに警戒しないで。 今日は休みを取ったから、岸野くんと ドライブに行こうと思って」 「ドライブ、ですか」 「その前に、朝ごはんできてるって。 食べたらすぐ支度して。手伝うし。 俺と楽しく出かけようよ」 彼の笑顔に触れ、何かを思い出しかけた。 『日本に帰ったら、俺といっぱい』 ‥‥何をいっぱい? 途端、頭が痛くなり、慌てて打ち消した。
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