9人が本棚に入れています
本棚に追加
車を降り、彼の先導で敷地の中を歩く。
どうやらここは農家のようだ。
敷地に住居と作業場、直売所と書かれた
看板と小さなテントの下に数人の年配の
女の人がお客さんを相手にやり取りして
いる。
「岸野くん、着いたよ」
何棟も連なるビニールハウス。
そのひとつに彼が入って行くのに続いた。
「あ、」
ビニールハウスの中には収穫作業をする
何人もの人がいた。
「‥‥トマト?」
傍らの真っ赤に実るトマトが、
宝石のような艶やかな輝きを放っている。
「岸野くん、トマト好き?」
「はい‥‥たまに行くイタリアンで、」
不意にまた、何かを思い出しかけた。
最初のコメントを投稿しよう!