最後に、もう一度だけ。

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車を降り、彼の先導で敷地の中を歩く。 どうやらここは農家のようだ。 敷地に住居と作業場、直売所と書かれた 看板と小さなテントの下に数人の年配の 女の人がお客さんを相手にやり取りして いる。 「岸野くん、着いたよ」 何棟も連なるビニールハウス。 そのひとつに彼が入って行くのに続いた。 「あ、」 ビニールハウスの中には収穫作業をする 何人もの人がいた。 「‥‥トマト?」 傍らの真っ赤に実るトマトが、 宝石のような艶やかな輝きを放っている。 「岸野くん、トマト好き?」 「はい‥‥たまに行くイタリアンで、」 不意にまた、何かを思い出しかけた。
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