最後に、もう一度だけ。

『トマトのカプレーゼ、頼んでもいい？』
誰かがそう言って微笑んだ。
赤ワインがおいしくて、料理が進んだ。
場所が変わり、
空港で誰かとスマホで写真を撮った。
お揃いの黒のキャップ。
あの時はまだその人は緊張の面持ちで。
『こうして岸野くんと写真が撮れるなんて』
どこかの街、電話ボックスの前で。
『岸野くんとまた笑い合えて良かったと
思ってる』
そして、また空港の中のカフェで。
俺はその人にこう言ったんだ。
『日本に帰ったら、俺といっぱいデート
してもらえませんか』
俺はその場に崩れ落ちた。