ごぼう転生 〜いや、木の根っこじゃねーか!〜

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「いや、木の根っこじゃねーか!」  オレのツッコミが森に響く。  うっそうと生い茂る木々がざわわと揺れた(気がする)。 「ちょっ、お前、何食ってんの?! ペッしなさい、ペッって!」  オレに全力で止められているのは、儚げな女の子のエルフ。  淡い金髪のロングヘアが印象的だ。  天の羽衣のような薄くて透け感のある服。  銀の華奢なピアスとネックレス。  印象的なグリーンの大きな瞳。  それはまるで、触れてはいけない硝子細工のように華奢で。  体温で溶けてしまう淡雪のように繊細で。  なのに。 「なんで?! なんで木の根っこを一心不乱に食べてんの?! ちょっと、無視すんなよ! 腹壊すって!!」  この世のものとは思えない儚げなエルフは木の根を思いっきりかじってましたとさ。  服とか口の周りを土で汚しながら。  …………。  いや、マジで何なん?!  おもわずエルフの腕をつかむ。  細くて、透き通るように白い肌。  あれ、無断で触れたらマズい?  だが掴んでしまったものは仕方ない。  エルフは思いっきり怪訝な目を俺に向けた。 「止めてくれるな、転生者。わらわにはこれが必要なんじゃ」  森の一部のような、泉のきらめきを思わせるような、透き通った声。  なんだけど。  ・・・・・・口調にクセがあるな、このエルフ。  語尾に「じゃ」をつける古風な話し方。  町で会うエルフたちは、みんな普通に話す普通の現代っ子だぞ。  というか。 「オレが転生者だって知っているのか」  開口一番、転生者と呼ばれた。  それも気にかかる。 「貴様、町で食堂を開いている男じゃろ。貴様の店は『転生者が作る異世界の味』と宣伝しておるではないか、阿呆のように何度も。嫌でも耳に入るわい」  エルフはつっけんどんに言った。  見た目は14歳くらいの美少女エルフなのに、なんか、いろいろ「濃い」。  古風で、高飛車。  て言うか貴様って。阿呆って。 「貴様って言うなよ。オレには芯太郎っていうれっきとした名前があるんだ。みんなシンタロって呼ぶからシンタロでいい」 「奇妙な名じゃの」  ほっといてくれ。 「で。なんで木の根をかじる必要があるんだ。迷子か。仲間とか集落からはぐれたんか」 「失礼な男じゃな。ここがわらわの住処じゃ」 「森じゃん」 「何か問題があるかの」
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