ごぼう転生 〜いや、木の根っこじゃねーか!〜

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 それから店に着く間にも、何人か顔見知りから声をかけられた。商店街の面々は、最初オレに厳しくて嫌がらせなんかもしてきたのに、今では快く迎えてくれる。  理由は、共済金や寄付金。そして奉仕活動。  最近食堂が軌道に乗ってきたから、求められる金は惜しみなく払うようにしたのだ。あと時間が空いたときにゴミを拾ったり掃除したりした。すると周りの態度も気がつけば軟化したのだ。なんともゲンキンなものである。  そうこうしている間に、目的地に着いた。  オレの店、「食堂シンジロウ」。  空いた建物を譲ってもらったから、造りは立派。ちょっとやそっとの悪天候は屁でもない。  煉瓦で建てられ、魔法で補強されている。  うーん、異世界。  オレは裏口に回り、配達されている山菜類をチェックに入る。次に中に入り、冷蔵庫の食材を確認。  冷蔵庫といっても扉付きの大きな本棚に冷気の魔法をかけてあるものだ。  異世界の冷蔵庫とはこういうものである。  モーター音のしない冷蔵庫、ちょっと違和感あるな。自動製氷機もないから、突然がしゃんという音がすることもない。  異世界製冷蔵庫の中に入れているのは、卵や肉・魚類。どれもこの町の環境だと貴重な品々だ。いつもちまちまと使っている。メインで使う食材は、アホほど取れる山菜やキノコ、豆類など。たまには肉にかぶりつきたい日もあるけど仕方ない。 「やっほー、シンタロさん」  裏口から声がした。  元気な女の子の声。 「おう、マリィ。よろしくな」 「任せて!」  マリィはここの従業員だ。主にフロアを担当している。ふわふわした薄紫色のボブヘアに、猫耳。そう、マリィは獣人だ。  普段は家業で薬草の加工をしている、十五歳の娘。だが最近は食堂に手伝いに来てもらっている。店が軌道に乗って、猫の手も借りたいくらい忙しいからだ。  マリィのおかげで、オレはキッチンに集中できるわけ。  それにオレはこの世界の習慣や常識を全部把握してるわけではないから、マリィに任せた方が安心だし効率が良い。知らない間に失礼ぶっかますこともないわけだ。 「シンタロさん、今日の夕定食は?」 「山菜の天ぷら。トリ肉もあるから、かしわ天もつけようかな。あと山菜の和えもの、根菜の煮物、干し肉のスープ」 「りょーかい。今日はウチ経由で茶葉持ってきたから、食後に出していーい?」
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