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いつも通りの宴会。
恭 しかし花見で献杯なんて聞いたことないわよ。
綿 でも乾杯するのも何か可哀想じゃないですか?
恭 そりゃそうだけど。
橋 唐揚げ貰いー。
佳 私にも取って。
橋 えー、届くでしょ。
葵 佳奈ちゃん、はい、あーん。
佳 え、あ、あーん。
咲 あ、ずるいです。葵さん、私にも。
葵 はいはい。ほれ、あーん。
咲 あーん。
恭 鳥の親子の餌やりみたい。
田 恭子さんも綿貫にやって貰ったらどうですか?
恭 やるか!
田 痛い! 殴らないで!
恭 生意気になったわねぇ田中君。そんで相変わらずの石頭ね。
田 自慢です。
葵 中身は空っぽのくせにな。
田 ひどい。
橋 その通りじゃん。
葵 君が言うな。今日、我々を呼び付けた時点で君ら三人、纏めてバカだからな。
綿 俺も!?
葵 当たり前だろ。
綿 だって見捨てられないですよ、女子と花見をしないと成仏出来ない幽霊なんて!
葵 下心しか無いな。
木 セクハラとかはしませんから。
葵 当然のように会話へ入ってくるんだな。お気になさらずとか言っていたのに。
木 憧れだったので、我慢出来なくて……。
葵 早ぇよ、我慢の限界が。
田 ……。
咲 徹君、今、エッチなことを考えたでしょう。
田 え!? い、いやそんなわけないじゃん。
咲 葵さんの我慢の限界って発言に、顔、逸らした。
田 違うよ! たまたま!
葵 ほぉ? どんな邪な想像をしたんだい?
田 違いますって! むしろ咲がエッチに捉えたんじゃないの!?
咲 え、ち、違うよ!
田 でも思い付いてなきゃ俺を責められもしないでしょ!
咲 それは君の態度があからさまだったから!
葵 何だこのスケベなコンビは。
橋 しょうがないですよ、咲ちゃんも田中もムッツリですから。
葵 橋本君はオープンだもんな。
橋 そっちの方が正直でいいでしょ。
佳 いいわけあるか! 女と見たら鼻の下を伸ばすんだから。
橋 そんなことないよ。
恭 最低ね!
綿 そうですよ。
葵 綿貫君と足して二で割ったら丁度いいんじゃねぇの。
佳 綿貫君は面倒臭いレベルで女子が苦手だもんね。
綿 面倒臭い!?
佳 面倒臭い。
綿 友達とは言えそこまではっきり断言するのはひどくない!? いや自覚はあるけど!!
恭 昔、旅行先で部屋に私と二人きりになった時、場がもたないからって私は会ったことも無い橋本君へ電話を掛けたの、忘れないから。
橋 あったなー、そんなこと。
葵 何やってんだミスターウブ。
綿 その節は申し訳ございませんでした。
木 私も同じようにしちゃうかも。
葵 綿貫君が拗らせた場合、二十年後は木元さんになるわけか。
綿 見捨てられない気持ち、わかりましたか。
葵 妙な同情だな。
木 されないよりもありがたいです。しかし皆さん、幽霊である私を随分あっさり受け入れましたね。お若いのに大した胆力と言うか、柔軟性と言うか。
葵 なにせうちには超能力者がいるので。
咲 ブイ、です。
木 成程。いやあ強烈でしたねぇ、サイコキネシス。
葵 こいのぼりみたいになっていたもんな。
木 ははは、これは手厳しい。
田 でも駄目だよ咲、いくら人がいないからって力任せに解決しようとしたら。もし仮に木元さんがぶっ飛んで行ったとしても、成仏したわけじゃないんだし。根本的解決になっていないじゃん。
咲 事情も話さず私達を集めておいてよく言えたね。
田 だって話したら来てくれないでしょ。
葵 気まずい自覚があるから隠し事をする、と。ろくでなしめ。
田 いやでも俺なら来ないし。
咲 だったら誘わないでよ。
田 見ていられなくて。
恭 しかし来ないとも限らないわよ。お願いです、地縛霊をあの世へ送りたいんです。そのために一緒に花見をして下さい。一生懸命そうやって頼まれれば腕まくりをしてやって来るっての。
佳 流石恭子さん! 死人の面倒見までいいなんて尊敬します。
恭 当たり前よ!
葵 お前は酒が飲みたいだけだろ。
田 でしょうね。
綿 うんうん。
恭 ちょっと! 折角佳奈ちゃんに尊敬されたんだから台無しにしないでよ!
佳 まあわかっていましたけどね。
恭 人の心とかないの!? 持ち上げておいて落とさないで欲しいわ。
佳 はいはい、飲んで飲んで。
葵 酔わせてお持ち帰りでもしようってのか?
佳 葵さんと一緒にしないで下さい!
橋 スケベばっかりですね。
田 お前が言うな!
橋 俺はお手付きなんてしないもーん。
綿 嘘を吐け。
田 バレていないだけだろ。
橋 お前ら、俺をどう思っているの?
田 手の早い女好き。
綿 無垢を装ったケダモノ。
橋 ひでぇな。
葵 だが橋本君はマジでその辺の隙を見せないんだからな。大した奴だよ。
橋 どうもどうも。
田 世界で一番嫌な褒めだな。
綿 橋本も喜ぶなよ。
恭 綿貫君はもうちょっと女子に慣れなさいよぉ。
綿 何で俺に矛先が向いたんですか。
恭 スケベになれとは言わないけど、緊張するのはいい加減やめなさいって。
綿 今、緊張していないでしょ?
葵 友達と飲んでいる時に緊張されたら嫌だよ。
恭 昔はしていたじゃないのよさ。
葵 語尾。酔ってんな。
綿 今、緊張していなきゃそれで良くない!?
恭 過去は消えないのよ!
綿 そんなぁ。
葵 諦めろ。ただの絡み酒だ。
恭 絡んでなんかいないわよーだ。
田 絡んでる絡んでる。
木 花見の席での絡み酒なんてよろしくないですよ。
葵 ぶはは、死人に説教されてやんの。
恭 ふんだ、貴重な体験よ。ご忠告、ありがとうございます木元さん。
木 いえいえ。私も生前、会社の花見で散々上司に絡まれて嫌な思いをしましたから。
恭 ふうん。
葵 ろくな飲み会じゃねぇな。
綿 でも恭子さん、マジで今日は飲み過ぎないで下さいよ。公園の中までタクシーは来てくれないのですから。
恭 咲ちゃん。私が酔い潰れたらサイコキネシスで介助してね。
咲 いいですよ。
田 でも咲も今日は飲んでいますよ。酔っ払ったら力加減が上手くいかなくて恭子さんの体をひん曲げるかも。
恭 怖いな!
佳 そもそも恭子さんが飲み過ぎなければいいのでは?
恭 それは無理よ! 何故ならたらふくお酒を買って来たから! 今日は飲むわよー! なにせ花見ですもの!
葵 花見じゃなくてもしょっちゅう泥酔しているだろうが。
田 うんうん。
咲 確かに。
佳 そうですね。
橋 違いない。
綿 全くです。
恭 皆揃って完全アウェイな空気にしないでくれる!?
葵 この中で恭子の泥酔により被害を被った経験がある人、手ぇ挙げて。
全員 はーい。
恭 嘘でしょ!? 全員!?
葵 私は夜中の二時に家へ押し掛けられた。
佳 いい体をしているわねってあちこち触られました。
咲 日曜日の朝九時に、夜通し飲んでいた恭子さんから家に呼び出されました。
田 何も言っていないのに、何だとこの野郎って胸倉を掴まれました。
橋 いいケツしてんじゃんって尻をぶっ叩かれました。
綿 初心なら存分に慣れなさいって頬擦りされました。
恭 もうやめてぇぇぇぇぇ!!
葵 やめるのはお前の飲み方だ。それか酒癖を改めろ。
恭 すみませんでしたぁぁぁぁぁ!!
葵 やれやれ。ちなみに佳奈ちゃん、何処を触られたの?
佳 ……聞かないで下さい。
葵 たちの悪い酔っ払いだねぇ。
佳 葵さんも大概ですー。訊かないで下さいよ、そんなこと。
葵 私は悪意をもってやっている。恭子は酔っ払って前後不覚になり暴走している。さて、どっちの方がまともかな?
佳 どっちもアウト!
葵 はっはっは。
木 しかし恭子さんとやら、随分と豪快ですね。
葵 バカなんだよ。
木 貴女の評価ではバカばっかりじゃないですか。
葵 三馬鹿、泥酔バカ、超能力者、後輩。そんな認識だな。
田 過半数がバカ!
橋 っていうか俺らを三馬鹿って括りにしないで下さいよ。
綿 一番駄目な奴がそれを言う!?
田 女癖が悪いのにな。
綿 運動神経も悪いし。
田 秘密主義だし。
橋 それは別にいいだろ。
綿 料理も出来ないし。
橋 出来なくても何とでもなるもーん。
佳 いや出来た方がいいでしょ。
橋 それはそうだけど。
咲 私、お魚を捌けないんだけど佳奈ちゃんは出来る?
佳 出来るよ。
咲 そっか。サイコキネシスでバラバラには出来るんだけどね。
佳 怖いよ咲……。
葵 な、恭子。あんまり咲ちゃんに絡むとバラバラにされるぜ。気を付けな。
恭 どうせ私は酒癖の悪い女よ……。
田 今度は落ち込んじゃいましたか。
葵 放っておけ。その内また暴れ出す。
佳 あはは、確かにそうですね。
木 では絡まれる前にお暇するとしましょうか。
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