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室谷はそれ以上は何も聞かない。
軽くボールを投げてみて、受け取らない相手にはそれ以上踏み込まないと決めているみたいだった。
放課後の誰も居ない生徒玄関はシーン、としていて、なんだか気持ちいい。
ガヤガヤと意味もなく喋っている生徒たちの隙間をぬって外に出るのは苦手だ。
それに、今はまだマシになったが入学したての頃は、靴を玄関に置く事にすら恐怖を覚えていた。
登校して自分の内履きズックが失くなってるのもそうだし、下校時に履いて帰る靴が失くなってる事も一度や二度じゃない。
そんな時に親身になってくれたのが室谷だった。
「生徒玄関に防犯カメラを取り付けて下さい」
室谷は校長と教頭に頭を下げ続けた。
令和になり、いろいろな事が目まぐるしく変化していく世の中で、この"学校"という場所だけは昭和から何も変わらない不思議な聖地だ。
過去に"事例"の無いものを特に嫌う。
変化させたくないのだ。
"変わらないこと"がたとえ生徒を追い詰める結果になったとしても。
たかが防犯カメラ一つ取り付けるだけで、生徒同士の無駄な行動が減るかもしれない。
外部からの不審者から校内の生徒たちを守れるかもしれない。
あらゆる利便性を打ち出して室谷は学校側を説得した。
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