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室谷は至って普通だった。
いつもと変わらずに穏やかに私と向き合う。
私はそれが嫌だった。
「終業式に出たんだって?凄いじゃないか」
「何か、わかるかと思って」
「何か?」
不思議な顔をした室谷の前に、私は色褪せたユニホームを置いて言った。
「あの日、これを持って行ったらパトカーと救急車が来てた。先生、陸は今どこに居るんですか!?」
室谷は黙っていた。
大人の世界特有の、何か丁度いい答えを探しているみたいに見えた。
「陸のお父さんと陸のこと、先生も知ってますよね?2人はどうなったんですか!?教えて下さい!」
私は引かなかった。
陸と、もう2度と逢えなくなるのが怖かったからだ。
私の気迫に室谷が降参したように口を開いた。
「日鳥は、親戚の家に引っ越す事になった。転校して、二学期からは別の高校へ行く事に決まったよ」
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