君と、サクラ

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次に日鳥 陸に会ったのは三吉公園に1本だけあるソメイヨシノの木の下だった。 その日は昼食の時間にカウンセラー室を覗いてみたが室谷が不在で、唯一の行き場を失った私は脱走を試みた。 グラウンド沿いに立ち並ぶ桜並樹に隠れるようにしてフェンスを登って跨ぎ降りる。 生徒玄関は誰かしら教員に出会ってしまう可能性があるから、ズックは履き替えずに内履きズックのまま外へ飛び出した。 白い花びらが舞う中、ドキドキしながら闇雲に私は走った。 春の光が眩しい。 私は、脱走のついでに1人で花見でもしてやろうと思って学校の近所の高台にある三吉公園に行ってみることにした。 保育園の子供たちが遊んでいたら、うるさくて花見どころじゃないから、子供たちが居たら帰ろうと決心して行くと、天気も良いのに人っ子一人居ない。 誰も居なかったら優雅で良いなぁ、なんて思いながら来たものの、本当に誰も居ないとなると、それはそれで微妙な気分になった。
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