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「最後に、この桜と街を見ておきたくて」
彼はいつもと変わらない口調で微笑んで言った。
「お父さんと離れて暮らすの?」
「そのほうがいいんだって。岩手に祖母がいるからそっちで暮らす事になったんだ」
「そう・・・・」
サワサワと、そこにあるはずの無い桜が舞っているように感じた。
陸の肩に桜の花びらが留まって、落ちた。
「じゃ、もう行くよ・・・」
「りくっ!」
私は大きく息を吸った。
私はもう一人じゃない。
「5年後の今日、元気だったらここでまた会おう。この桜の木の下で」
陸は立ち止まって、あの屈託のない笑顔で笑った。
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