8人が本棚に入れています
本棚に追加
トートバッグの中でカタカタとお弁当箱が鳴る。
料理上手な母親が朝から作ってくれていた。
見事なくらいのソメイヨシノだ。
私の両手を広げても足りないくらい幹の太さがある。
サラサラ、という効果音をつけたいほど花びらが風に揺れては落ち、まるで晴れた日に降る雪のようだった。
「あっ・・・・」
思わず声が出た。
ソメイヨシノの根元で寝ている人が居たからだ。
その人は私の声に驚いて、ムククと身体を起こし、私の制服を見て
「同じ学校の人?」
と目をこすりながら言った。
「あ、はい、たぶん」
と私は答える。
私は、その眠そうな顔に見覚えがあった。
「日鳥 陸・・・さん!?」
彼はちょっとだけ目を見開いて
「なに、俺、有名人?」
と笑った。
最初のコメントを投稿しよう!