君と、サクラ

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トートバッグの中でカタカタとお弁当箱が鳴る。 料理上手な母親が朝から作ってくれていた。 見事なくらいのソメイヨシノだ。 私の両手を広げても足りないくらい幹の太さがある。 サラサラ、という効果音をつけたいほど花びらが風に揺れては落ち、まるで晴れた日に降る雪のようだった。 「あっ・・・・」 思わず声が出た。 ソメイヨシノの根元で寝ている人が居たからだ。 その人は私の声に驚いて、ムククと身体を起こし、私の制服を見て 「同じ学校の人?」 と目をこすりながら言った。 「あ、はい、たぶん」 と私は答える。 私は、その眠そうな顔に見覚えがあった。 「日鳥 陸・・・さん!?」 彼はちょっとだけ目を見開いて 「なに、俺、有名人?」 と笑った。
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