君と、サクラ

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屋上の扉がいつも開いている事は、入学してきた時から知っていた。 物騒だな、と思った。 不審者が侵入して来るから物騒だという意味ではない。 生徒が"落ち放題"だから物騒なのだ。 現代の高校生は"自殺したい材料が充分に揃っているスーパーマーケット"くらい自殺しやすい環境にいる。 逆に"自殺してはいけない理由"がどこをどう探しても見つからないのだ。 ペパーミントグリーンの低い金網を手で掴んで眼下を見下ろすと、そこには大嫌いな校舎と無駄に広々とした校庭が一気に見渡せた。 「あ、オモテノコヅチ」 声にビクッとして振り向く。 コンクリートで日陰になっている場所に寝そべっていたのは日鳥 陸だった。 驚いた。 三吉公園で偶然会ってからまだ24時間も経っていないのだから。 私の脳裏に浮かんだある言葉を、いとも簡単に彼は口にした。 「運命かな?」
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