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私が住んでいる東京都のある町には、とても大きな児童館がある。
そこでは、毎年、春になると大規模なお花見イベントが行われ、出店の1つとしてお化け屋敷が開催されていた。
職員や子供達の手作りのお化け屋敷だが、これがかなり本格的で、毎年リタイアも出る程怖かった。
今から10年前の春。
ちょうど桜が満開になり、お花見イベントが開催されていた際、出店の一環として同じくオープンしていたそのお化け屋敷に、地域広報誌が取材に訪れる。
手作りのお化け屋敷ながらもあまりに恐ろしく、且つ人気があるとしてかなり有名になっており、お花見の時期に合わせて区の広報担当者とカメラマンが実際に体験に来たらしい。
そんな客人へのお化け屋敷の案内役に任命された私と友人。
私達ははりきってお客様をご案内した。
破れた障子から白い和服の女が飛び出してくる和風エリアや、ミイラや吸血鬼がいる洋風エリア。
ゴール付近は魔女の集会所になっており、恐ろしい魔女達が不気味にギロチンを操りながら、次の生贄を決める集会をしている。
説明をしながらも、実際のお化け屋敷を先導する私達。
実際の配置等は知っていても、やはり本格稼働したお化け屋敷はかなり恐ろしく。
特に、魔女の集会所エリアの、ギロチンを操る老齢の魔女等は相当怖かった。
銀のアルミホイルで作ったのであろうギロチンの刃は、下におろされる度にシャリンッシャリンッと嫌な音を立て、まるで本物のようだったのである。
ともあれ、無事に取材は終わり。
数日後、現像した写真達を手に広報担当者が児童館にやってくる。
職員や子供達の意見を聞きながら、掲載する写真を決めるらしい。
すると、ある写真を見て――写真を選んでいた児童館の職員が手を止める。
「あれ?1枚だけ、うちのお化け屋敷のじゃない写真が混じってますね」
職員がそう言って差し出した写真は、あのギロチンをおろしてくる魔女を写した写真だった。
「これ、うちのお化け屋敷じゃないですよ。そもそも、こんなおばあさん、うちの職員にいませんから」
その言葉にハッとして写真を覗き込む私と友人。
すると、確かに写真の中では――児童館では1度も見たことがない筈の老婆が無表情で写っていた。
(案内していた時に何で気付かなかったんだろう……?)
次の瞬間、辺りに響くシャリンッシャリンッという音。
気付くと、写真の中の老婆が怪しげな笑いを浮かべていた。
悲鳴を上げる友人や職員達。
写真はお焚き上げに出され、翌年からお化け屋敷は行われなくなった。
あまりに本格的なお化け屋敷過ぎて、本物の『何か』が来てしまったのだろうか。
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