50人が本棚に入れています
本棚に追加
昨日はああやって強がってみたものの、正直言って怖さはある。ルルメリアからの死の宣告は、子どものおふざけで片付けられないような気がしていたのだ。
ぎゅっとバックの持ち手を握り締めながら、周囲を警戒して歩き続ける。
通りまであとわずか、というところで不気味な声が聞こえた。
「あんた、死相がでてるねぇ」
「……え?」
声のする方に振り向いていれば、そこにはローブをまとった怪しげな女性が水晶玉に触れていた。
(……もしかして、占い師の方?)
学園で生徒たちが話している噂を聞いたことがある。なんでも、的中率が高い占い師がいるのだとか。
「あんた、死相がでてるよ」
目が合うと、今度は確実に私に向けてそう言い放った。
「死相……ですか?」
「そうだとも」
思い当たる節があるからか、占い師の女性の言葉は私の不安を一気に煽られてしまった。ぐっと唇に力を入れ、ごくりと唾を飲み込む。恐る恐る女性に近付くと、一言尋ねた。
「……私は死ぬんですか」
「死相がでてるからねぇ。その確率が高いよ」
女性はフードを深くかぶっているので、口元しか見えなかったものの、怪しさは拭えなかった。
「あ、あの」
「お客さん。これ以上は有料だよ?」
「有料……」
話を聞きたい気持ちもあったが、お金を出せるほどお財布に余裕はなかった。断ろうとすれば、女性は引き止めるように話した。
「だがしかし。お金はとらないよ」
「えっ」
「初回さんはね、評判を広めてくれるだけでいいからね」
「ほ、本当ですか」
「あぁ。頼んだよ」
それは何ともありがたい話だ。そう思いながら女性の向かいに座ると、早速疑問を口にした。
「あの。死ぬという運命は決まっているんですか?」
「そうだねぇ……死相といっても、あくまでも“死ぬ危険性”が高いことを示しているだけだ。あんたが確実に死ぬというわけではない」
女性は自分の両手を絡ませると、そのままにっと笑った。私は真剣な声で尋ね続けた。
「抜け道はあるんですね」
「そうだね。だけど起こる出来事は変えられない。私もあんたも神様じゃないからね」
どういうことだろうと頭を働かせれば、女性はすぐに答えを教えてくれた。
「自分以外の、だよ。自分の行動は自分の意思で変えられるが、これから起こる他の出来事――例えば、あんたが死ぬはずだった事故は起こるだろうね」
「じ、事故って……」
「それ以外は私にはわからないね。だからせいぜい、注意深くしなとしか言えないのさ」
「……いえ。それだけで十分です。ありがとうございました」
最初のコメントを投稿しよう!