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自分が死ぬ運命を変えられるのなら、希望はある。警戒を怠らないで買い物を済ませて家に帰ろう。占い師の女性にお礼を言うと、生きて帰れたら評判を広めることを約束した。
慎重に買い物を済ませると、きょろきょろと馬車がないか他に危険はないかと確認しながら歩き続けた。
すると、前方からこちらに向かってくる馬車が見えた。
(もしかして、あの馬車――)
占い師の言うことを思い出した。起こる出来事は変わらないと。だとすれば、視界に映るあの馬車は事故を起こす。直感でそう思ったのだ。
(普通に走っているように見えるけど、どうして事故が……)
そう思いながら辺りを見渡せば、よろよろと歩いている男性に目がいく。
少し離れた状態でもわかる、どんよりとした雰囲気の男性。服装こそ平民の町並みに溶け込んでいるものの、漏れ出る気配は貴族特有のものがあった。
(え……待って。もしかしてあの人)
嫌な予感が過った私は、慌てて走り出した。そして男性の腕を両手で掴むと、馬車に向かって身を投げ出そうとした体をどうにか引き寄せて留めた。
「…………どうして」
男性は道を見つめたまま、力ない声でそうこぼしたのだった。
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