自称転生者らしいです

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自称転生者らしいです

 ルルメリアからとんでもない言葉が次々と出てきた。私は整理するのに精一杯だが、この子がおかしなことを言っている気にはなれなかった。 (…………前世の記憶、か)  人には前世があるという話は、いつか本で読んだ事がある。しかし、ルルメリアの言うことが本当なら、この子の中身は単純な子どもではないのかもしれない。  記憶をたどれば、思い当たる節が一つだけあった。  ルルメリアは両親が死んだ時、一切泣くことがなかった。どこか無表情で、悲しんでいるようにはあまり思えなかったのだ。当時は、まだ“死”という概念がわからないのだろうと考えていたが、もし逆ならばつじつまが合う。 「ルルは私が叔母だとわかっているの?」 「もちろん! おとーさまとおかーさまがおそらにいるのもしってる!」 「……お空」  ビシッと天井を指さすルルメリア。言っていることは正しい。しかし、あまり悲しさを感じずに死を理解できていることに、私は勝手に胸が苦しくなって目を伏せた。 (それだけ……兄様と義姉様と過ごした時間も、思い出も少なかったのよね)  行き場のない感情を呑み込みながら、もう一度ルルメリアを見つめた。 「お父様とお母様がいなくて寂しくない?」 「うん! だっておかーさんはいるもん!」 (全部理解した上での言葉、なのね)  微笑むべきなのかわからないが、この子が無理して気丈に振舞っているのではなさそうだった。  思考はどうやら、年相応の子どもらしさも残ってはいるようだ。かといって、完璧に五歳児らしいわけではない。 「じゃあルルは、本当に前世の記憶があるのね」 「あるの!」  そこは万歳して喜ぶところではないが、行動はやはり五歳児だ。  前世の記憶があるとしても、精神面はまだ未熟ということだろうか。 (……まだ気になることは多いけど)  ひとまず話はここで終わりにし、夕食を取ることにした。  これ以上は私の方が理解が追い付かずに潰れてしまう気がしたから。それに、ルルメリアにたくさん話させてしまうのは疲れに繋がる。何せまだ五歳児なのだから。  ルルメリアを寝かせると、その寝顔を見ながらどうするべきか考えていた。 (まいったな。ルルの教育方針をどうするべきか……)  兄から忘れ形見として預かった以上、真っ当な子に育てる義務が私にはある。とても男をはべらすようなことを考えているようでは、真っ当とは言えないだろう。 (取り敢えず明日また聞いてみよう)  幸いにも次の出勤まで日があるので、ルルメリアと対話をして理解を深めることを決めるのだった。  
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