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料理長の動きを真似するように、自分もトマトを切ってみる。簡単な動作だったので上手くいくだろうと思えば、案外不格好になってしまった。
「……均等にならなかったな」
「とてもお上手ですよ」
切れたは切れた。見た目はあまりよくないことだけ引っ掛かった。
「形を綺麗にするのは慣れですから。オースティン様でしたら、すぐ上達されますよ」
「あぁ。努力する」
ぎゅっと再び手のひらを握ると、どんどん野菜を切り始めた。
料理長の動きを見ては真似をするのを繰り返して、少しずつ無駄のない動きを目指した。
「野菜を切ったので、次はパンに挟みます。せっかくなので、下に引くソースを作ってみましょうか」
「ソースを作るのは難しいのか?」
「今回は混ぜるだけなので、簡単ですよ」
料理長の言うことは本当で、調味料とベースとなるソースの分量をはかって混ぜ合わせるだけだった。
「今作ったソースを、パンに塗っていきます」
「……こう、だろうか」
「はい。お上手です」
チラリと確認をとれば、にこにこと頷く料理長に安堵する。
「これで野菜を挟めばサンドイッチ、か」
「はい。簡単でしょう?」
「あぁ。これなら俺でもできる」
できあがったサンドイッチを試食してみる。よかった、無事美味しいものができた。それと同時に、向上心が芽生え始める。
「……他の料理も挑戦してみたいんだが、時間は大丈夫か?」
料理長はこの申し出が意外だったのか、今度は目をぱちぱちとさせた。それでもすぐさま頷いて「もちろんです」と返ってきた。
サンドイッチは作れた。それは嬉しいことだ。ただ、クロエさんとルルさんに返すなら別のものが良い。そんな気がしたんだ。
ふうっと息を吐くと、次の料理に取り掛かった。
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