お姫様ごっこをしましょう

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お姫様ごっこをしましょう

 夕食を食べ終えると、ルルメリアが嬉しそうに話を始めた。 「このまえのばざーでいっしょになったこが、ぱんやさんにきたんだ!」 「そうなの」 「うんっ」  バザー会場から、マイラさんのパン屋まではそう遠くない。偶然訪れてもおかしくはないので、運命的な導きに驚きつつ耳を傾けた。 「それでね。こんどあそぶやくそくしたの!」 「そっか、それはよかった」  遊ぶ約束まですれば、立派なお友達だろう。オースティン様だけでなく、ルルメリアに年相応の友達ができて良かった。 「よっかごにね、はんなちゃんのおうちにいくやくそくしたの。いってもいい?」 「うん、いいよ」 「やった!」  まさかそこまで具体的に話を進めていたとは思わなかった。ただ、それほど親しくなという証拠なので喜ぶべき部分だろう。  遊ぶ当日、パン屋さんに迎えに来てくれるそうなので、ハンナちゃんとハンナちゃんのお母さんに是非とも挨拶をしよう。それで問題なさそうだったら、送り出そうと決めるのだった。  翌日、遊ぶことがよっぽど嬉しかったのかルルメリアはそわそわし始めた。  元々元気のある子だったが、動きが粗雑になっていった。お皿をテーブルに置く時にガチャンという音をたてたり、ぬいぐるみなどで遊んだら片付けなくなったり、家の中を全速力で走る等と少し興奮しているようだった。  ……一応、他所の家に預ける予定なんだよな。  それを踏まえると、ある程度の動きは注意した方が良い気がした。我が家でできないことを、ハンナちゃんのお家でできる気がしない。  ……ここで淑女教育を始めるのか。いや、ルルメリアには早すぎるような気がするんだけどな。  どうしようかと悩みながら昼食を済ませた。  ルルメリアの性格上、勉強を嫌がるのは聞かなくてもわかる。そうなれば、一対一で教えると理解された瞬間やる気をなくしてしまう。ただ、このまま元気すぎる行動を直さないで送り出すのも不安が残ってしまう。  うーんと頭を悩ませていると、ルルメリアが奥の部屋から洋服を持ってやって来た。 「ねー、ねー、おかーさん。はんなちゃんちにどっちのふくきていこうかな?」  まだ三日後のことなのに、よほど楽しみなのか服を悩み始めていた。そんな姿は微笑ましいので、笑みを浮かべながら真剣に見比べる。 「そうだね。こっちの服はピンクで可愛いよね」 「うん、おひめさまみたい!」 「そうだね、お姫様――」  復唱したところで、はっとあることに気が付いた。もしかしたら、今思い付いた方法なら上手くいけるかもしれない。 「ねぇルル。せっかくだから、そのお洋服着てみない?」 「うん、そうする!」  
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