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大きく首を縦に振ると、たったったと自分の部屋に戻っていった。着替えて戻ってくると、私はぱちぱちと拍手をして褒めた。
「おぉー、良く似合ってるよルル」
「ほんと?」
「うん、お姫様みたい」
「えへへ」
まんざらでもない様子で喜ぶルルメリアに、私はそっと提案した。
「ルル、せっかくだからお姫様ごっこする?」
「おひめさまごっこ!?」
よし、食いついた!
ぱあっと目を輝かせながら、前のめりで聞き返してくれた。
「そう、お姫様ごっこ」
「する‼ あたしおひめさまになる!」
「じゃあやってみよう。私執事役やるね」
「うんっ!」
これでさりげなく淑女教育ができるぞ! と思いながらルルメリアに誘導し始めた。
「お姫様と言えば、やっぱりお茶会じゃないかな?」
「おちゃかい、あたしもやりたい!」
「では、準備しますのでそちらにお座りください、お姫様」
「はーい!」
それっぽい口調でルルメリアを椅子に座らせる。我が家には高級なティーセットはないものの、なるべく近い茶器を用意する。
「こちらをどうぞ」
「いただきます!」
うん、元気がよい。お上品ではないものの、その言葉を直すべきかは悩みものだ。
飲み終えたルルメリアは、ガチャンと大きな音を立ててカップをテーブルに置いた。
「ルル姫様、どうでしょう?」
「とてもおいしいです!」
にこにこと笑みを浮かべるルルメリアに、私は口元に片手をたててこっそりと伝えた。
「ルル、せっかくならもっとお姫様っぽくなれる技、知りたくない?」
「おひめさまっぽく……!」
目を輝かせるルルメリアの正面に座って、茶器を手に取った。
「こうやって、持ったカップを静かにそっと置いてみるの。それで、少しだけ微笑んで美味しかったですというと、お上品でお姫様っぽく見えるよ」
「ほんとだー!」
私の中にある淑女の作法を思い出しながら、できる限り品よく振舞ってみせた。純粋なルルメリアは、すぐに納得してくれた。
「やってみる?」
「うん!」
さっそくルルメリアは、もう一度茶器を手にして一口紅茶を飲む。そうしてじっと茶器を見つめながら、息を殺してそっとテーブルに置いた。
「おいしかったです」
「凄いよルル、本物のお姫様みたい。素敵だね」
「ほんと? やった!」
まだまだ粗削りではあるものの、ガチャンとは置かなくなった。それに加えて以前より、落ち着きのある動きに見える。
まずは一つ、教えることができた気がするなと、内心で喜びを噛み締めていた。
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