それはただの略奪です

2/2
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
 翌日の朝、ルルメリアは部屋から出てこなかった。もっというと、ベッドから出てこなかった。布団を全身で被ったルルメリアは、動きそうになかった。ポンポンと丸まった布団に触れる。 「ルル、朝だよ。ご飯の時間」 「……おかーさんきらい」  どうやらルルは寝れば忘れるタイプではないようだ。 「いいの? 今日はルルの好きなチョコレートパンなんだけどなぁ」 「ちょこれーと‼」  バッと布団を退かして起き上がるルルメリア。ばっちりと目が合う。 「マイラさんからさっき買ってきた、できたてのパンなんだけど」 「できたて!!」  不機嫌そうな声は消え去り、一気に笑顔がこぼれた。 「あたし、ちょこれーとぱんたべる!」 「はい、おはようルル」 「おはよーおかーさん!」  ご機嫌になったルルメリアは、そのまま食卓に直行した。着替えなさいと言いたかったが、今日だけは見逃してあげよう。  おいしそうに頬張るルルメリアに、私は自分の分のパンを渡す。 「ルル、これあげる」 「えっ、おかーさんのだよ」 「昨日ルルに酷いこと言っちゃったでしょ? だからごめんなさいのパン」 「……うん、いいよ! なかなおりね!」  にっこりと笑みを浮かべるルルメリアに、ほっとしながら食べる様子を眺めていた。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!