二人きりの時間

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 花市場とは、定期的に王都で開催されるイベントで各所から行商が集まるものだ。花屋が主催したことから花市場と言われているらしい。雑貨から食べ物、衣服など豊富な種類が売られていると聞いたことがある。 「行ったことがないので、是非行ってみたいです」 「それなら……!」  こうして私達は花市場に行くことになった。  以前と同じくオースティン様のエスコートを受けながら目的地に向かう。 「オースティン様は花市場に行った経験があるんですか?」 「仕事の関係で数回ほど。あまりゆっくり見れたことはないので、今日お誘いできて嬉しいです」  私もお店を見て回るのは久しぶりのことなので、とてもわくわくしていた。  開催場所に到着すると、既に多くの人で賑わっていた。 「このネックレス、クロエさんにとてもよく似合うと思います」 「ありがとうございます……可愛らしいイヤリングですね」  装飾品を見るなんていつ以来だろう。  ルルメリアを引き取ってから無駄遣いをしてはいけないと、自分に言い聞かせてきた節があったので、それくらい長い間購入をしてこなかった気がする。  だから余計に、店先に置かれた装飾品を見るのは楽しかった。 「……すみません、これを一つ」 「ありがとうございます」  オースティン様は私に似合うと言ったネックレスを即決で購入された。 「良かったらこれ」 「えっ」 「クロエさんにとてもよく似合うと思うので。ささやかではありますが」 「そんな……」  申し訳ないと思いながらも、純粋に選んでくれた理由が嬉しかった。 「……いただいてもよいのでしょうか」 「はい。私がこのネックレスを付けたクロエさんを見たいので」 「では……」  オースティン様からネックレスを受け取ると、早速つけてみることにした。  緊張しているからか、あまり上手くつけることができない。 「すみません、髪が絡まってしまって」 「お手伝いしてもよいでしょうか?」 「……お願いします」  髪を持ち上げてオースティン様の方に背を向けた。彼の指先が首元にわずかに当たって、余計に緊張が増す。 「できました」 「どうでしょうか……?」  再びオースティン様の方に振り向くと、恐る恐る彼の顔を見上げた。 「とても素敵です。このネックレスは、クロエさんのために作られたものですね」 「あ……ありがとう、ございます」  オースティン様ってこんな甘いことを言う人だっただろうか?    私は戸惑いながらも、賛辞を胸の中に大切にしまうのだった。
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