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あぁ、惜しい。
でも本人がこういう貴族らしいことや、淑女教育に興味を持ってくれるのはやはり喜ばしいことだ。
「おかーさん、もっかい! もっかいおしえて!」
「もちろん」
ルルメリアから要望を受けたので、もう一度丁寧に立ち姿を教えた。呑み込みの早いからから、ルルメリアはみるみる上達していった。
朝食を食べた後も立ち方の練習は続いており、上手になったルルメリアはなぜか首をかしげていた。
「うーん……ちがう」
「何が違うの?」
「おかーさんみたいにきらきらしてない」
「……きらきら?」
初めて聞くルルメリアの表現に、私は何を指した言葉だろうと想像を膨らませた。
きらきら、はわかる。子どもの視点から見たそれは輝いていることに近しい意味合いだと思う。けれども、ルルメリアから見た私がきらきらしているのは、いまいち理解できなかった。
「ねぇおかーさん。どうやったらおかーさんみたいに、きらきらできるの?」
純粋な眼差しで見上げられる。少し考えた結果自分の中で見つけ出した答えとしては、貴族としての気品だろうということだった。
「……私も上手ではないんだけど」
そう前置きをした上で、ルルメリアにとってわかりやすい言葉で伝えていく。
「とにかく自分が貴族だって思うことかな。まずは自信を持って胸を張ることが大事だから」
「……うん?」
首をかしげる様子を見ると、あまりピンときていないようだった。
「えぇとね……後は肩の力を抜くことも大切。気品はおしとやかな雰囲気から出されるものだから」
「……ううん」
どうにか説明をするものの、ルルメリアには納得できないもののようだった。
「きらきらはきひんじゃなくて」
「……気品じゃないの?」
まさかの捉え違いをしていたことが判明した。ルルメリアは私の返しにこくりと頷いた。
「うん。おかーさん、すっごくきらきらしてるの。たのしそーで、うれしそーにみえるから」
「楽しそうで、嬉しそう……」
「あとね、ぜったいがんばるぞ! っていうほのおもみえるの。ぜんぶあわせて、きらきらしてるの!」
どうやらルルメリアの言うきらきらは、今の私を指していたようだった。
「きらきらしてるおかーさん、すてきだなって。いいなぁって思ったの」
「ルル……」
まるでそれは、自分もそうやってきらきらしたいのだと言いたいようにも聞こえた。
そこで初めてルルメリアの意図を理解したとき、どうして私はきらきらしているのか娘の求める答えを見つけ始めた。
(……答えは一つだけ)
それは単純で、でもルルメリアには大事に大事に伝えたいことだった。
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