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ハーレムとは違う恋
好奇心の眼差しに、私は小さくと微笑んだ。
「実はこの前の花市場で、オースティン様のお知り合いに会って。その方は貴族のご令嬢だったの」
「ごれーじょー」
「うん」
私が受けた屈辱を、五歳の娘に話すのはいかがなものだろうかと引っ掛かる部分もあった。
(でも……ハーレムという言葉を考えれば、聞かせられない話じゃない)
何よりも、きらきらを解き明かすには必要な話だった。
「私、その方に侍女だと言われたの」
「じじょ……」
「簡単にいうとね、貴族には見えない。令嬢とも思えない。……それよりも下だと、見下されたと言えばいいのかな」
どうすればルルメリアにわかりやすく伝えられるか、考えながら慎重に言葉を選んだ。
伝わっているか不安になりながら娘を見れば、凄く不機嫌そうな表情になっていた。
「ル、ルル?」
「やなひとだ」
「嫌な人……ご令嬢のこと?」
「うん。やなひと。だっておかーさんはぼつらくでもきぞくだもん」
「ルル……」
ムスッと頬を膨らませるルルメリアに、私は嬉しくなってしまった。
「……ありがとう、ルル。私も凄く嫌な気持ちがしたし、何より悔しくて。だからもう二度とそんなこと言わせないぞって頑張ることにしたんだ」
「おかーさんはもえてるんだ!」
「燃えてる……ふふっ、そうかも」
ルルメリアがぎゅっと力をいれた両手を、胸の前に掲げた。その動作が可愛くて頼もしくて、自然と笑みがこぼれた。
「おかーさんはがんばってるから、きらきらしてるんだね」
まるで納得したという声色のルルメリアに、私の笑みはスッと消えた。そして一呼吸つくと、真剣にルルメリアを見つめる。
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