ドレスをまとって

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ドレスをまとって

 演奏会当日。  オースティン様から贈られたドレスを身につけると、そわそわとし始めた。ドレスを着た姿で迎えるのは初めてなので緊張で落ち着かない状態だった。  ルルメリアは以前まとめた髪型を気に入ってくれたようで、今日も同じように髪を結った。私は単純に髪を下ろしている。鏡の前で自分のドレス姿を再度確認した。  オースティン様が送ってくださった、青と白のドレス。細やかな刺繍とレースで施されたドレスは、シンプルなデザインでも高級感あふれるものだった。 (……ドレス、似合ってるかな。せっかく贈ってもらったものだけど、着こなせていなかったら申し訳ない)  緊張も相まって、不安と心配が胸の中に広がっていく。すると、ルルメリアが私の手をぎゅっと握った。 「おかーさん、せかいでいちばんきれいだよ!」 「ルル……」 「だからね、じしんもって!」  屈託のない笑顔は、私の暗い気持ちを消し去ってくれる。肩の力が抜けたのが、自分でもわかった。 「ありがとう、ルル。ルルもとっても素敵だよ」 「うんっ。でもね、おかーさんのほうがもっとすてき!」  手を大きく上に挙げて円を描きながら、嬉しい言葉をかけてくれるルルメリア。娘に心配をかけてしまったことを理解すると、私はすぐさま切り替えた。 「そうかな? ルルの方が、もっともっと素敵だよ?」 「えっ。うんと、じゃあね、おかーさんはこれぐらい! もっとすてき!」  先程よりもめいいっぱい手を広げて円を描くルルメリアの優しさが、胸に染み込んだ。 「……ありがとう、ルル。おかげで元気出た。自信も出た」 「やった!」  ルルメリアと笑い合えば、家の外から何かが近付いてくる音が聞こえた。   
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