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死の宣告を受けました
翌日、私は学園へ出勤した。何事もなく学園にたどり着いたものの、頭の中にもやがかかったままだった。
勤務時間を終えて帰路に着くものの、今日は買い出しをしないといけない。晴れない気持ちのまま、お店の並ぶ通りへ向かう。
(……私が死ぬ、か)
昨日、義娘のルルメリアからとんでもないことを言い渡されたことを思い出す。
「おかーさんはしんじゃうんだよ?」
「………………ルル、嘘でもそんな物騒な……怖いこと言ってはいけません」
やっと絞り出したのは、ルルメリアを諫めるものだった。
ルルメリアがふざけて言っているのではない気はしていた。ただ、あまりにも唐突に言われたものだから、驚いてしまった。
「うそじゃないもん! ほんとだもん!」
そう言い張るルルメリアに、私は疑問が残る。
何せ私は健康体だから。どこか痛いところもなければ、体が重く感じることもない。それにまだ二十歳なのだ。子どものおふざけで、あり得ないと感じるのが普通だった。
「ほんとに、おかーさんはばしゃにひかれてしんじゃうんだよ!」
自分の言い分を信じてもらえかったからか、ルルメリアはむっすりとした顔で私の方を見ていた。私はその言葉に深刻な表情になる。
「……馬車」
オルコット家は馬車に因縁でもあるのだろうか。兄と義姉が亡くなったのも馬車だ。それに加えて、私まで馬車で死ぬと? 冗談じゃない。
苛立ちを覚えていると、ルルメリアは私の様子を見て下を向いてしまった。
「……おかーさんはしんじゃうんだ」
どこか寂しそうな、悲しそうな声色に私は何と声をかけるべきか考えた。そっと背中に手を伸ばすと、私は一言伝えた。
「お母さんは死なないからね」
強く言い切ったものの、ルルメリアの落ち込んだような表情のままだった。
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