桜と轍

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ーーーー 11年後。大夢君はすっかり大きくなって、17歳という難しい年頃になった。 寂しいのはここ数年。恒例行事となっていた、春の集いの差床者が、お父さんとお母さんの二人だけという事。 また、三人で同じお弁当を囲む姿が見たいのになぁ。 「ほら、こっち!」 すると、心地よいある日の昼下りに、久しぶりに大夢君がやってきたの。 でも、隣に居るのは知らない女の子。それにしても、お綺麗な人ね。大夢君も、お父さんの凛々しさと、お母さんの優しさの含んだ、かっこいい男の子になったわね。 「凄い!こんなに大きな桜の木があったなんて、ここは穴場のスポットだね!」 女の子は私を見上げて、華々しく笑っている。大夢君は、私には目もくれず、隣に咲く花に夢中なようね。なるほど。そういうことね。 「(ひいらぎ)! 聞いて欲しい事があるんだ!」 おやおや、随分とストレートじゃないの。 二人は向き合って、恐らく、柊ちゃんも、この後の展開を予想しているようで、もう頬をピンクに染めているわ。 「俺は、君の事が好きです! お付き合いして下さい!」 大夢君の初めて見る、真っ直ぐな眼差しに、いつかのお父さんの眼差しを思い出したわ。 「大夢。うん! 私も、同じ気持ちだよ! よろしくお願いします! 」 そうやって、はにかむ初々しい姿に、いつかの二人を思い出して、やっぱり親子だななんて、微笑ましくなったわ。 今年は、例年以上の桃色な季節になったわね。
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