桜と轍

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ーーー 8年後。大夢君はもう、すっかり大人になって、お父さん似の素敵な男性になったわ。 そして、左の薬指に輝く指輪をはめた陽入りちゃんも、お腹に幸せを抱えて、私を見上げている。 「大丈夫? やっぱり、妊婦さんには、この道は険し過ぎたんじゃない? 」 「大丈夫よ。このくらい。そんなに急な道でもないし」 大夢君も、すっかりパパの顔になっているわね。相変わらず、お父さんとお母さんの姿はないけれど、お二人とは、仲睦まじくやっているのかしら? 少し心配だわ。 今年は、そんな一抹の不安と共に眠りについた。 ーーー6年後。 「パパ!ママ!じぃじ!ばぁば! 早く!」 今年は嬉しい事があったの! 大夢君が久しぶりに、お父さんとお母さんと一緒に、私の所に来てくれた。 大夢君と、柊ちゃんの宝物の、(さき)ちゃんも、もうあんなに走り回るほど大きくなって。 いつかのよつに、広げたシートは、また一段と大きなものになって、今度は五人で囲むお弁当は、きっとお母さんと柊ちゃんの手作りね。 「親父、ほら」 大夢君は、お父さんにお酌をするようになったんだね。本当に感慨深いわ。 「あら、柊さん。これとても美味しいじゃない! 作り方教えてよ」 「はい! じゃあ、お義母さんも、この玉子焼きを教えて下さい。大夢ったら、私の玉子焼きより、お義母さんの玉子焼きのほうが良いって、いつも言うんですよ」 「まぁ、玉子焼きに関しては、おふくろに敵うやつはいないだろうな」 そんな談笑は、私の心に再び春を運んでくれたわ。とても暖かくて。ずっと、ずっと見ていたいと思うの。
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