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「荒井くん、ちょっといいかな?」
声の方に顔を向けると、そこには女子生徒が立っていた。
彼女は確か隣のクラスだった気がする。
ショートカットで、目はくりっと大きくて可愛らしい顔立ちをしていて男子から人気がある子だ。
名前は忘れたけど…。
「俺?」
陽太は自分を指さして首を傾げると、その子はコクリと頷く。
陽太は立ち上がり、彼女の方へ向かう様子を僕はぼんやりと眺める。
「あれは、絶対告白だな」
隣にいた進一郎がニヤニヤしている。
「えっ?そうなのかな…」
「いや、絶対そうだって!陽太モテるし、可愛い子に告られたら付き合うんじゃないかなー」
それだけ言うと、進一郎は興味なさそうに食べかけのパンを口に放り込んだ。
陽太たちの方をチラッと見ると、なにやら楽しそうに話している。
チクリっ。
まただ。この痛みはなんなんだろ? 胸の奥がモヤモヤする。
目線の先にいる陽太はどこか照れ臭そうに笑っているのを何だか見てるのが辛くて、僕は視線をそらした。
確かに、小学生のときより背が伸びて、僕とも頭一つ分身長差ができたし、体格もがっしりしてきた陽太を見て女子達が騒ぐようになった。可愛いかった顔立ちは精悍になり、凛々しい顔つきになっている。
金髪にしたこともあってさらにカッコよくなったと思う。
見た目は変わっても中身は変わらず優しくて強い思いやりのある性格だから人気が出て当然。
友達として誇らしく思うと同時に陽太の人気の高さに寂しさを感じる自分がいた。
そんなことを考えいたら、胸が痛みとモヤモヤが増してきて思わず胸を手で押さえる。
なんだろう……。 どうしてかは分からなかった。
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