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季節はあっという間に流れて凍てつくような風が吹く中、寒々とした風景が街に広がる。
「もうすぐ、高校受験だね……」
僕がマフラーを巻き直しながら呟くと、隣に立つ陽太は白い息を吐きながら頷いた。
「そうだな……推薦で受かったやつはいいけど、俺らはもうすぐだしな」
はぁーっと吐く息はすぐに白く濁り消えていく。
「僕たちは一緒の高校だけど、進一郎はどこにしたんだろうね?最近、全然会ってないけど…」
「…あいつは大丈夫、今頃勉強頑張ってるだろうし。聞いても教えねぇとか言ってたぞ」
「ふふっ、そっか」
「陽太、頑張ろね!一緒に合格しよう!!」
僕がガッツポーズをして意気込む姿に陽太は目を細めて微笑んだ。
「あぁ、そうだな」
その笑顔に胸の鼓動が激しくなる。
もう何度も見ているはずなのに、なんでだろう……。
「じゃあ、また明日な」
分かれ道で手を振る陽太に手を振り返し、姿が見えなくなるまで見送り空を見上げると、雪が降り始めていた。
それから数日後……
ついにその日はやってきた──。
試験当日になり、会場に向かう道中も緊張していたけど、教室に入った途端更に心臓がバクバクしてきた。
「優月、大丈夫か?」
陽太が心配して顔を覗き込んでくる。
「だ、大丈夫だよ。それより陽太こそどうなの?」
僕が聞き返すと、少し考えてから口を開いた。
「うーん、まぁいつも通りやれば大丈夫だと思うんだけど……優月の方が心配だな」
「やれることはやったし、頑張るよ」
「だな!お互い頑張ろうぜ」
そう言って背中をポンっと叩かれる。
「うん…」
僕は頷き前を向いた時、先生が入ってきたので慌てて席に着いた。
そして、筆記用具を机の上に置くと深呼吸してからシャーペンを手に取った。
数時間後、すべてのテストが終わった頃には疲れきっていたがなんとか無事に終えることができたことに安堵する。
あとは結果を待つだけか。
「陽太!どうだった?」
僕は帰り支度をしている陽太に声をかけるとニッと笑いながらピースサインをしてみせる。
「余裕だったわ!」
その様子に僕もつられて笑う。
「うん。僕も結構解けた気がする」
「よし、帰るか!」
並んで歩き出し校門を出ると冷たい風が吹き付けてきて身震いする。
ふと、見た先に他校の生徒たちに混じって進一郎に似た後ろ姿を見つけた気がした。
進一郎?
「陽太!あれ、進一郎に似てる人がいない?」
指差して問いかけると陽太はそちらを見て首を傾げる。
「ん?どれ?居ねぇじゃん!そんなはずないだろー」
もう一度、確認するように視線を向けると居なくっているのを見て、苦笑いをする。
やっぱり見間違いだったのかな……?
首を傾げながら歩き出す僕の隣で陽太は笑っていた。
後日、合格発表の掲示板に自分たちの番号を見つけたときは二人で抱き合って喜んだ。
これで春からはまた同じ学校に通えると思うと嬉しくて堪らなかった。
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