陽太の異変

1/10
前へ
/70ページ
次へ

陽太の異変

僕と進一郎が同じクラスで陽太は隣のクラスになってしまったけど、陽太とまた毎日会えると思うと嬉しかった。 ただ…、入学してからしばらくして陽太の様子がおかしくなった。 元気がないように見えるし学校も休みがちになっている。 放課後は家に帰らずに、やんちゃなそうな友達たちと遊び歩いているみたい。 そんな陽太の様子が心配になって聞いてみたことがあったけど、はぐらかされて教えてもらえなかったし、その後も何度かどうしたのか聞いても 「なんでもない」 「気にすんな」 そう言って作り笑いをする陽太は、踏み込むな、と言わんばかりの態度にそれ以上聞くことも出来ず、見守ることしか出来なかった。 何か悩みがあるなら言ってほしいと思う反面、踏み込むことができない自分が歯痒い。 陽太はたまに一人で抱え込んでしまう事がある。 人気者だから周りには自然と人が集まって来るけれど、それは表面的なものでしかない。 本当は寂しがり屋で甘えん坊なくせに、強がってばかりで弱音を吐くこともないんだ…。 僕が悩んでいても何も変わらない事は分かってるけど…それでも、このままで良いのかな。 話したくないのに無理やり聞き出すわけにもいかないか…。 僕には何が出来るんだろう? なにも出来ない。そんな日々が続いたある日、いつものように帰り支度をしている僕に進一郎が声を掛けてきた。 「最近、陽太なんか変じゃないか?」 僕だけが感じているのかと思っていたが、どうやら進一郎も同じ気持ちだったようだ。 「やっぱり進一郎もそう思う?なんか悩み事でもあるのかな……」 僕も心配だったが、陽太から話してくれるまで待つことにしていた。 それから数日経っても一向にその気配がない。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加