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「あれは…向こうからふっかけてきたんだよ」
「そうなの……?」
納得していない様子の僕を見てため息をつくとチラッと視線を向けてくる。
「あぁ」
再び黙り込むと何かを考えているようだ。
「陽太。危ないし、喧嘩なんてやめなよ」
その言葉に、陽太の表情が一瞬曇った気がしたけど、すぐに笑顔になる。
「大丈夫だって!俺、強いみたいだし」
明るい口調で言うけど、無理して笑ってるように見える。
ヒーローに憧れてるって言ってたのに、これじゃ逆だよ……。
「もう、やめて。陽太はヒーローじゃなかったの?今の陽太はかっこよくないよ…」
そう言うと、驚いたように目を見開き、俯いてしまったかと思うと小さな声で呟く。
「……わかってるよ……かっこ悪いってことくらい……」
今にも消え入りそうな声に不安を覚えると同時に胸が苦しくなる。
「ヒーローか…、俺はもう、そんなじゃないな…。優月は素直で可愛いままでいてくれよ」
ぽんと僕の頭に手をのせて苦笑いしする陽太の顔は少し寂しそうに弱々しく見えた。
「陽太、本当に何があったの!?ちゃんと話して!!」
陽太の腕を掴んで必死に訴えかけるが、首を横に振り頑なに口を開こうとしない。
そんな様子に苛立ちを感じつつも、これ以上踏み込んではいけない気がして、それ以上は何も言えなかった。
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