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バタバタと廊下をかける音がして振り向くと、先生が慌てた様子で教室に入って来た。
僕たちの方を見て、驚いたあと額に手を当て項垂れている。
どうやら騒ぎを聞いて来てくれたみたいだった。
「こらぁ!!荒井!!」
その声にビクッとした僕に〈大丈夫〉と口パクで伝えた陽太は僕を庇うように前に出る。
「悠真と昇が優月に意地悪してたからやっつけたんだよ。弱い物いじめなんてかっこ悪いじゃん!」
胸を張って堂々と言い切った陽太の言葉に先生は深いため息をついて頭をかく。
「そうだな。中村を助けたのは偉かったぞ。でもな、だからって暴力はいけないなぁ……」
そういわれて、少ししょんぼりする陽太に先生が苦笑いしながら続ける。
「友達には優しくしなきゃダメだぞ!それに中井と杉田も友達をいじめちゃダメだ。三人とも謝らないといけないよな?どうする?」
先生に言われて、悠真くんと昇くんは顔を見合わせた。
「……ごめん」
「……悪かったよ」
二人に謝られて、僕は少し戸惑いながらいいよと頷いた。
「悠真、ごめん…」
陽太も謝ると、四人で握手して仲直りした。
それを見ていた先生はホッとしたように笑っている。
放課後、陽太が一緒に帰ろうと言って僕の手を引っ張て教室を飛び出し廊下を二人で走って下駄箱まで向かった。
さっきのお礼ちゃんと言ってなかったから、言わなきゃと思った僕は立ち止まって陽太の手を離した。
「あの、あのね。さっきは助けてくれてありがとう!」
もじもじしながらもお礼を言うと、陽太は少し照れくさそうに頭を掻いた。
「ん?あぁ!俺、ヒーローだから当たり前だろ!!」
ニシシッといたずらっ子のように笑う姿に、僕もつられて笑顔になる。
「⋯陽太は星命戦隊好きなんだね!僕も好きなんだ!」
「ほんとか!?じゃあ、一緒だな!俺はキラレッドが一番すき!」
「僕はね、やっぱりキラブルーかなぁ。カッコイイよね!」
「だよな!!必殺技とか超かっこいいし!」
「…僕もレッドや陽太みたいに強くなれるかな」
「⋯⋯え?」
突然、僕がそんなことを言い出したからか、陽太はキョトンとした顔で僕を見つめる。
自分でもなんで急にこんなこと言ったのか分からない。
ただ、あのときの陽太がすごくかっこよく見えて教室に入ってきた時からずっとドキドキしてる。
「優月もなれるよ!今度、一緒に星命戦隊ショー見に行こうぜ!」
「うん!約束だよ!」
そう言って笑いかけてくれた陽太に大きく頷くと、また僕の手を握って走り出した。
僕の手を引っ張って先を走る陽太は大きな声で星命戦隊の歌を歌っている。
それが、とっても楽しそうで眩しかった。
それが、僕と陽太の出会い。
陽太は太陽みたいに僕を照らして強くなれる勇気をくれた。
僕のヒーロー。
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