戦隊ショー

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戦隊ショー

一緒に帰った日に分かったことがある。 意外にも、陽太と僕の家はそんなに離れていないかった。 歩いて五分の距離なのに、一回も出会わなかったのは僕が友達がいなくて家に籠っていたからだと思う。 家に帰った僕は急いでリビングに向かった。 「ねぇ、お母さん!僕、友達できたんだよ!今度、陽太と星命戦隊ショー見に行く約束したんだ!」 興奮気味に話す僕に母さんは少し驚い顔をしたけど、すぐに嬉しそうに笑って、僕の頭を優しく撫でた。 「優月、お友達できたの?良かったね!」 「うん!」 母さんは少し瞳を潤ませていた。 そんな母さんをみて、初めて自分から友達ができたことを報告したことに、なんだか恥ずかしくなって俯いた。 あれから毎日、陽太と遊ぶようになって学校でいじめてくる子はいなくなった。 たまにからかわれたりするけどそんなの全然へっちゃらだ。 だって、僕には陽太がいるもん。 僕にとって陽太は一番の友達になった。 しばらくして家の近くのショッピングモールに星命戦隊ショーがあると聞いて、僕と陽太は約束通りショーを見に出かけた。 陽太の母さんと僕の母さんは初対面だったけど、話が盛り上がっていて楽しそうにお喋りをしている。 会場に着いてしばらくすると、星命戦隊のテーマ曲が流れ、ステージの上に五人の星命戦士が現れた。 その瞬間、わぁっと大きな歓声が上がる。 僕はその姿をじっと見つめた。 すごいなぁ……。 これが、本物のヒーローなんだ……。 初めて見るヒーローの姿に感動して、目が離せない。 しばらくショーを見ていると、不意に陽太がこっちを向いて目が合い二ッと笑った。 ショーが始まると歓声に混じって「やっけろー!」「いけー!」など叫んだり、拳を振り上げたりして応援した。
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