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お揃い
あれは中学一年生の時、陽太が急に金髪で登校してきた日のことだ。
「よう…た…どうしたんだよその髪!?」
「似合うだろ?」
陽太は自慢げに僕に見せてくる。
「うん!似合ってるけど…なんでいきなり金髪にしたの?」
「ん?何となくだよ」
「え!?それだけで染めちゃったの?」
「おう!」
無邪気に応える陽太に驚いたと同時にかっこいいと素直に思ってしまった僕はその日、学校の帰りに脱色剤を買って家に帰ってすぐに髪を脱色した。
朝、洗面台の鏡に映る自分の姿を見て我ながら驚いた。
うわぁー、やっぱりすごい色だな…。金髪じゃなくて何かオレンジに近いし、失敗しちゃったかな。
陽太みたいになりたくて、髪を金髪に染めたのに全然似てないじゃん。
これじゃあ、ただの痛いやつにしか見えないよ……。
溜息をつきながら、学校に着ていく服に着替え始めた。
この髪を見た母さんは驚いて口をパクパクさせた後、僕が不良になったとうなだれてしまった様子に慌てて誤解を解きつつ、朝食を済ませ家を出た。
これを見たら陽太はどんな反応するか楽しみでドキドキしながら迎えにインターホンを押すと、少し間があって玄関の扉が開き陽太が出て来る。
僕を見た陽太はポカンと口を開けたまま暫く固まり次の瞬間、爆笑された。
「陽太に憧れて、僕も金髪にしてみたんだけど…変かな…」
そう言って不安げに聞くと、ひとしきり笑い終えた陽太が「あはは。わりぃ」とまだ、お腹を抱えて笑うからムッとして頬を膨らませた。
「ごめん、ごめん、怒るなって!変じゃないけど、優月には元の髪色が似合ってると思うけどな俺わ!」
笑いながら頭をポンポン叩かれたので、プイッと顔を背けると、頬っぺたを両手で挟まれて正面を向かされる。
「拗ねるなよー、優月は俺の真似したかったんだろ?お揃いだ!な?」
至近距離で見つめられ、ドキッとする。
「う、うん……」
頬から手を離しニカッと笑った陽太に僕は頷いた。
陽太の手がまた伸びたと思ったら、僕の前髪を一房摘むと持ち上げた。
「でも、俺に憧れなくても、優月はそのままでいい」
真剣な声と陽太の眼差しが優しく僕に注がれていた。
その視線に鼓動が早くなる。両手はすでに離れたのに頬が熱くなっていく。
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